第85話

そうする間にも、どんどん激しさを増してくる発作。




これは…、さっき無理やり抑え込んだからその反動が来てるな…。思考だけは冷静で、そんなことを考える。




とうとう目が霞んできて、ガクッと膝から力が抜けて崩れかける身体。





「うぉっ、」





そんな声と共に、身体が支えられたと感じたすぐ後、ふわっと、身体が浮いたような浮遊感が私を襲った。





――気が付けば、いわゆるお姫様抱っこというものをされていた。




『…は、ぁ…、な、に…っ、』




まともに言葉も喋れない中、必死に何をするんだと目で訴えかける。




「いいから、大人しくしてろ。歩くのもしんどいんだろうが?このまま保健室行くぞ。」




一瞬だけ私の顔を見下ろしてそう言ってくる茶髪は、私の返事も聞かぬまま足早に歩き出した。




まぁ、返事をしようとしたところで口から出るのは荒々しい呼吸だけ。…仕方ない、大人しくしとくか。





今抵抗したところで発作が酷くなるだけだろうし、こいつは離してはくれないだろう。





とは言っても…、やむを得ないとはいえこの姿を見られるのは恥ずかしすぎる。





誰にも見られませんように…、と内心必死に祈りながら、そして発作とも戦いながら、保健室までの道程を何とか耐えた。

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