第70話

そして特に会話もなく、あの日以来2回目となる屋上に着いてしまった。





「琶來!こっち!僕の隣ね!」





屋上に着くなりキャラメルがぐいぐいと私の腕を引っ張って奥へと進んでいく。もちろん反対の腕に引っ付いている金メッシュも何も言わず付いてくる。





フェンスの側まで移動したところで、キャラメルが先に座って、ここに座れと言わんばかりに私を見上げながら隣をバンバン叩いてアピールしてくる。





「…藍都なんか放っといて、俺の隣、座って?」





藍都の真正面に座った金メッシュも、てしてしと控えめに隣を叩きながら見てくる。





えー…。正直どっちにも座りたくないんだけど。




そう思いながら一番静かそうな青メッシュに視線を移動させれば、フェンスの前の段差になっている場所に座って優雅に足を組みながら、どこから出したのかノートパソコンを膝の上に置いて、こっちを見向きもせずにもう既に自分の世界へと入っていた。…邪魔するなオーラが漂ってるなあれ。あからさまにあんなオーラを出されたらさすがに近付けないだろうが。




仕方なく最後の1人、赤髪の方を見れば。いつからこっちを見ていたのかすぐに目が合った。




無言でじーっとこちらを見つめている。あの目は、”こっちに来い”と語っている気がする。多分。




しばらくそんな無言の圧力を浴び続けた私は、はぁ…

、と溜息を吐き出した。





『…座ればいいんでしょ、座れば。』





小さくそう呟きながら渋々赤髪に近付き、少し間を空けて赤髪の隣に座ろうと腰を下ろしかけたところで。





『っえ、』





グイッと赤髪に腕を捕まれて引っ張られた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る