第69話

『離せ...っ、』




そう訴えながら手を離そうと試みても、強い力で掴まれていて離れる気配すらない。




ふと食堂の出口にいた真梨に視線を滑らせればちょうど目が合って、口パクで”頑張って”と言われた。挙句の果てに面白そうにニヤニヤしながら手を振る始末。




くっそ、真梨の奴…っ。助けてくれると少し期待した私が馬鹿だった。私と同じで面倒なことが嫌いな真梨が、助けてくれるはずないよな。そうだよな。





そして、周りの女達からの鋭い視線を背中に浴びながら、食堂を後にした。





が、食堂を出てからも腕を離してくれない赤髪。





『ちょっと、いい加減離してくれる?』





ズンズン進む赤髪の背中にそう言えば、





「離したらお前逃げるだろうが。」





間髪入れずそんな言葉が返ってくる。





『……逃げないから、離して。』





一瞬考えたことを見事に言い当てられて少し間が空いてしまった。




でも、こんな状況で逃げられるわけないでしょ。後ろには青メッシュ、左右にはキャラメルと金メッシュで固められている。




チラッと私の方に振り向いた赤髪は、少ししてようやく腕を離してくれた。




その瞬間、待ってましたと言わんばかりに両腕に引っ付いてくる2人。




赤髪から解放されたかと思えば今度はキャラメルと金メッシュ…。もうどうにでもなれ。




そしてさっきから何も喋らない青メッシュに目を向ければ、何が面白いのか口元を抑えふるふると肩を震わせて笑っている。




そんな青メッシュに冷めた視線を送れば、それに気付いたのかすぐに真顔に戻っていたけど、頬がぴくぴく動いていてもはや隠しきれていない。それを見て何がそんなに面白いんだよお前、と心の中で突っ込んだ。

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