第65話

…いや、もうあんな奴等のことなんてどうでもいい。とにかく今は早く食べて早く食堂から出ることの方が重要だ。




いつもはパスタやら定食やら食べるのに時間がかかるやつを注文しているが、今日はもう速さ重視で私も真梨もサンドイッチにした。




お互い無言で黙々と食べ続けていれば、僅か10分足らずで食べ終わった。





そして同時に勢いよくバッと立ち上がり、目にも止まらぬ速さでお盆を返して食堂の出口まで急ぐ。





はぁ…、漸くこの地獄みたいな食堂から抜け出せる…と思いながら食堂を出ようとした瞬間。






「あー!琶來だー!」






背後から、ここ最近で不本意ながら聞き慣れてしまった声が、聞こえた。






あ、まずい。バレ…、”た”、と最後まで思う前に、ドンッと背中に物凄い衝撃が走った。






『うっ…、』





そんな声が口から零れ、その予期せぬ衝撃に耐え切れなかった身体は、前のめりに倒れかける。






一瞬、倒れる、と思ったが、すぐに腰に回された誰かの腕で支えられ、ギリギリで倒れることはなかった。





…まぁ、その”誰か”なんて、見なくても大体想像はつく。





「危なかったぁ…。ごめんね琶來、勢いつきすぎちゃった!」





その声に仕方なく後ろを振り返れば、全く悪びれた様子もなく、てへっ、と効果音がつきそうな顔で舌を出しているキャラメルと目が合った。





そんなキャラメルに、周りの女達は「きゃあ!可愛い!」と顔を赤くしながら興奮していた。…理解不能だ。

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