第56話
たったそれだけの事で私は気に入られたのか?
…とんだいい迷惑だ。
「”たったそれだけ”、と思うかもしれませんが、僕達にとってはそういう女の子は”貴重”なんですよ。自分達で言うのはなんですが、僕達は全員顔がいいでしょう?そして有名な”狼鬼”の幹部。顔とブランドしか見てない女達が大勢寄ってくるんですよ。」
…私はもう何も突っ込まないからな。
『だから、”珍しい”私が気に入ったと?…はっ、いい迷惑ね。』
あんた達が”勝手に”気に入っただけであって、私には何の関係も無い。
そう思い、鼻で笑って冷たく吐き捨てた。
それに、気になる事がもう1つある。
『とりあえず、あんた達の用件は理解した。…でも、もし私が仮にここに毎日出入りする事になったとして、それに反対の奴が居るんじゃないの?…特に、そこに居るキャラメル色の髪の男とか。さっきから、ずっと私を睨んでくるんだけど?』
キャラメルに視線を移し、指を差しながらそう言えば少しビクッと肩を震わせて小さく目を見開くキャラメルと目が合った。
「…藍都。」
”あいと”、と赤髪がキャラメルらしき奴の名前を呼べば、
「だ、だって!僕は最初から反対してたじゃん、女なんて要らないって!」
グッと唇を噛み締めながらも、そう顔を歪めながら叫んだ。
この男…。
そんなキャラメルの言葉に、1つの考えが浮かんだ時、
「すみません、藍都は極度の女嫌いでして…。」
コソッ、と青メッシュがそう囁いてきた。
その言葉に、浮かんでいた考えが確信に変わる。
…やっぱり、女嫌いか。
あの、私を見る嫌悪の目。大体察しがつく。
そんな事を思っていれば、青メッシュが口を開いた。
「藍都、神堂さんに関しては、羅依が気に入ったんですよ?それにあなたも見たでしょう。僕達幹部全員を前にしても何一つ変わらない態度。これだけでも、神堂さんが他の女とは違うという証拠ですよ。」
そんな青メッシュの言葉に、またもや噛み付くキャラメル。
「女なんて皆同じなんだ!甘ったるい香水の匂いを振り撒いて、おまけに気持ち悪い声で媚びてきて結局は顔と地位しか見てない。誰も、中身なんて見ようとしてくれない…。この女も、どうせ他の女と一緒だよ!!」
私を憎悪の目で鋭く睨み付けながら、そう吠えるキャラメルの言葉に、ブチッ、と何かが切れる音がした。
”どうせ他の女と一緒”
その言葉に、遂に私の我慢も限界に達した。
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