第55話

「羅依…。それでは説明不足ですよ…?」






私が言葉の真意を探っていれば、呆れた様な顔をしてそう言う青メッシュに、赤髪は不服そうに顔を歪めていた。






「…じゃあお前が説明しろ。」






不貞腐れた様にそう言い、それ以降口を閉ざしてしまう赤髪。





そんな赤髪を見た青メッシュは諦めた様にはぁ…、と溜息を吐き、






「すみません、僕から詳しく説明しますね。」






そんな青メッシュに、コク、とだけ頷く。






「つまり羅依が言いたかったのは、神堂さんの事が気に入ったから、明日から毎日ここに来てほしい、って事です。」






『…はぁ?』






詳しく説明すると言っていたのに、赤髪が言った言葉と大して変わってないその説明に、ますます意味が分からなくなる。





まず、





『気に入ったって何なの?私、気に入られる様な事してないんだけど。』





私がそう言えば、






「まずはそこからですね。昨日の放課後、あなたは羅依と繁華街で会っていますよね?」






そんな事を聞いてくる。






『…まぁ、会ったって言えば会ったけど、ただしつこいナンパから助けて貰っただけよ。』






そう答えれば、






「その時のあなたの行動を、羅依は気に入ったそうですよ?」






…私の行動?






そう思い、昨日の事を振り返ってみるが、何度考えても気に入られる様な行動は取っていない。






『…意味が分からない。』






思わずそう呟けば、目敏くその私の言葉を聞き取ったのか、青メッシュが言葉を続けた。






「あの時、羅依に”媚びる”事も無く、”怯える”事も無く、淡々としていたそうですね?逆に、羅依に興味が無さそうだったとか。」





『…まぁ、否定はしないけど。それが何だって言うの。』






そんな青メッシュの遠回しな言い方にイライラしてきた私は、早く言えとその先を促す。






「そこですよ。羅依が気に入ったのは。」





『はぁ?』





「”狼鬼”の羅依に媚びる事も怯える事も無く、対等に話をしたのはあなただけなんですよ。」









…まぁ、とりあえず大体理解は出来たが。






『…それだけで…?』







思わずそう口に出してしまったのは仕方がない。

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