第40話

それからしばらく沈黙の状態が続いたが、漸く女が口を開いた。







「…あの、ありがとうございました。」






女の第一声はそれだった。






”俺”に媚びる様子も無く、寧ろ冷めた声色で普通に礼を言われた。






そんな経験は初めてで、思わず目を見開いてしまった。







『…いや…、大丈夫だったか?』







俺は驚きを隠しながらも、そう聞いた。







「別に、何もされてないので大丈夫です。…それじゃ、失礼します。」






女はそう無表情で淡々と言いながら、ペコっと頭だけ下げて歩き出そうとしていた。






『…おい、ちょっと待て…、』







無意識に女を引き留めようとそんな言葉が出てきたが、聞こえなかったのか女が歩みを止める事は無く、そのまま去って行ってしまった。










あの女…、面白ぇ。








そう思いながら、無意識に口角が上がった。





そして女が去って行った方向に視線を滑らせながらスマホを取り出し、仲間に電話をかける。

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