第38話

だから俺は、不思議とその行動に対する迷いは無かった。








『おい、その手離せ。』







そいつ等の前まで行き、気付けばそう口に出していた。








「あ?誰だてめぇ。」







急に現れた俺に、男は俺の方を振り返りながら威嚇してきたが、それも最初だけ。






だんだん、顔面が真っ青になっていく。






そして、”俺”に気付いたのだろう、







「…お、お前…!!”狼鬼”の…!!」







そう言いながら、ガタガタと情けなく身体が震え出した。






それでもまだ女の腕は掴んだままの男。







『その手、離せって言ってんだろ。』







更に声を低くしてもう一度そう言えば、







「…っ、す、すみません!!」








男は言葉を詰まらせながらもそう言い、漸く掴んでいた腕を離した。

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