第33話
誰だ?と思ったのは私だけじゃないらしく、
「あ?誰だてめぇ。」
と、声を低くしながらそう言い、男が振り返る。
腕を掴まれてる私も、必然的に男と共に後ろに振り返った。
するとそこには、180以上はあるんじゃないか?と思う程の高い身長に、恐ろしいぐらいに顔が整っている赤い髪をした男が立っていた。
…誰だこの男?
全く見覚えのない目の前の男に、少し首を傾げる。
が、この男は知っている様で、みるみるうちに顔が真っ青になっていく。
「…お、お前…!!”狼鬼”の…!!」
”狼鬼”?
この男、”狼鬼”の関係者なのか…?
げ…、どうしよう。とてつもなく嫌な予感がする…。
絶対面倒くさい事になるだろこれ。
早く帰りたい、切実に。
「その手、離せって言ってんだろ。」
静かに殺気を放ちながらそいつは言う。
「…っ、す、すみません!!」
男は小刻みに震えながら、私の腕を勢いよくバッと離した。
こいつ、この程度の殺気で震えてるのか…。雑魚だな。
もちろん私はこんな殺気怖くも何ともない。
これ以上の殺気を出すヤツが常に家にいるから慣れてしまっている。
「さっさと消えろ。」
「すみませんでした…!!」
そう叫びながら、一度もこっちを見ること無く走り去って行った。
この場に残されたのは、私とこの男だけ。
…どうしようか。
出来れば関わりたくないが…、一応助けてもらった感じだから、お礼言っといた方がいい…よな?
『…あの、ありがとうございました。』
散々悩んだ末、ちゃんとお礼を言うことにした私は、短くそう言って軽くペコッと頭を下げた。
「…いや…、大丈夫だったか?」
そうすれば、何故か小さく目を見開いた後、そう返ってきた。
『別に、何もされてないので大丈夫です。…それじゃ、失礼します。』
これ以上この男と一緒に居たくないと思い、軽くお辞儀だけして、そのまま背中を向けて歩き始める。
「…おい、ちょっと待て…、」
と、何故か呼び止めるような声が聞こえた気がしたが、これ以上面倒くさい事に巻き込まれたくないから、聞こえないフリをしてそのまま歩き続けた。
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