第32話

チッ…、あと少しで抜けられる所だったのに。





思わず内心舌打ちして、仕方なく後ろに振り返れば、見るからに不良の分類に入る様な派手な外見をした男が、気持ち悪くニヤニヤしながら立っていた。






…やっぱり来たか。しかも、明らかに”面倒そうな”男。






はぁ…、と小さく溜息を零せば、






「あ、溜息なんか吐いちゃってどうしたのー?何か悩み事?俺が相談に乗ってあげるよ?」






……果てしなく鬱陶しい。






お前のせいで溜息吐いてんだって言ってやりたい。






だが、そんな事を言えば面倒くさい事になるのは目に見えている。





だからそんな言葉は飲み込み、






『…別に悩み事とかないので、それじゃ。』






淡々とそう言って立ち去ろうとすれば、私の肩を掴んでいた手にグッと力を込められ、







「そんな事言わずにさぁ!!どっか楽しい所連れて行ってあげるよ?」






…しつけぇんだよお前。





別に急所を蹴り上げて逃げてもいいんだけど…、こんな人通りが多い場所ではさすがにまずい。






さて、どうするか…。






そう悩んでる間にも、今度は私の腕を掴み、どこかに連れて行こうとしている男。






チッ…、気持ち悪い手で触ってんじゃねぇよ、と我慢出来ずに口に出そうとした所で、








「おい、その手離せ。」








後ろから、殺気混じった声が聞こえた。

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