第27話

この人は、相野 透さん。





この学校の理事長で、私の父の昔のヤンチャ仲間らしい。




顔は綺麗に整っていて落ち着いた性格をしているけど、キレると恐いと言っていた。(←父から聞いた)




見た目は20代に見えるけど、正確な年齢は知らない。


…多分父と同い年ぐらいだろう。





この透さんが理事長って事で、両親は私をこの学校に入れたらしい。





もちろん私の”事情”も知っていて、昔から何かと気にかけてくれていた。






「…最近は、体調大丈夫?龍からたまに琶來ちゃんの話は聞いてるけど、今はどうかと思って。」





心配そうにそう聞いてくる透さん。





ちなみに、”龍”というのは、私の父の呼び名。


神堂 龍聖だから、昔から”龍”と呼ばれているらしい。






『大丈夫だよ。発作もしばらく出てないし。』






「そっか…、良かった。安心したよ。時々心配してたんだ。琶來ちゃんが産まれた時から知ってるからね、娘みたいに思ってるんだ。」





安心した様に息を吐く透さんに、自然と心が温かくなった。





…相変わらず、優しいなこの人は。






『ありがとう。…嬉しい。』






いつもは無表情であまり笑えないけど、この人の前では幾分か表情が柔らかくなってる様な気がする。






「じゃあ、僕はもう行くね。今から用事があって出るとこだったんだ。」




時計を見ながらそう言う透さんに、「うん、またね。」と軽く手を振る。






そして私も旧校舎に行こうと足を動かそうとすれば、先に歩き出していた透さんがクルっとこっちに振り返ってきた。





『?』





と不思議に思って首を傾げれば、







「そうそう。あの”空き教室”にまた何か必要な物があったら、いつでも言ってね?琶來ちゃんの頼みなら喜んで聞くし、何でも用意するから。」






そんな言葉を言い残し、今度こそ廊下の曲がり角へと去って行った。







…本当にあの人は、私に甘いと思う。







少し苦笑いを零しながら、私も旧校舎へと歩き始めた。








そして旧校舎の空き教室へと着き、中に入って”ベッド”にダイブした。






すると、眠気が限界に来ていたのか、自然と瞼が閉じていく。







それに逆らう事無く、眠りについた。

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