第15話
――…おはよう、ツキ。
ふ…、と意識が浮上する感覚がして目を開ければ、”薄いグレー”の瞳と目が合った。…私の、大嫌いな色。
いつの間にか、ツキと意識が入れ替わっていた。
私達は、自分達の意思で入れ替わる事も出来るけれど、無意識の内に入れ替わっている時もある。その時は少しびっくりするけど、もう慣れたもの。
――ツキ…、また派手に暴れたね?
つん、と鼻を掠めた匂いに自分の服を見下ろせば、べっとりと赤い液体が付いていて、今までの経験上それが血だと瞬時に理解する。
そんな私の呆れた声に、
――悪かったって…。これでも抑えたつもりだぜ?
反省の色が全く見えない淡々とした口調に、思わず溜息が零れる。
まったく…。いつもやり過ぎはダメだよ、って言ってるのに。
この惨状で”抑えたつもり”?はぁ…、いつまで経ってもツキの感覚には慣れないなぁ。
深い溜息を繰り返す私に、何回も「悪かった。」を連呼してくるツキだけど、心が込もってなかったら意味ないんだからね?と頬を膨らませる。
…もういいや。とりあえず着替えないと、”あの人”が帰ってきちゃう。
少し、いや、かなり憂鬱な気分になった心を奮い立たせて、急いでカバンの中から服を取り出す。
そして、早業の如くものの一瞬で着替えて、汚れた服を紙袋に入れてからトイレを出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます