第15話

――…おはよう、ツキ。





ふ…、と意識が浮上する感覚がして目を開ければ、”薄いグレー”の瞳と目が合った。…私の、大嫌いな色。





いつの間にか、ツキと意識が入れ替わっていた。





私達は、自分達の意思で入れ替わる事も出来るけれど、無意識の内に入れ替わっている時もある。その時は少しびっくりするけど、もう慣れたもの。





――ツキ…、また派手に暴れたね?





つん、と鼻を掠めた匂いに自分の服を見下ろせば、べっとりと赤い液体が付いていて、今までの経験上それが血だと瞬時に理解する。





そんな私の呆れた声に、





――悪かったって…。これでも抑えたつもりだぜ?





反省の色が全く見えない淡々とした口調に、思わず溜息が零れる。





まったく…。いつもやり過ぎはダメだよ、って言ってるのに。





この惨状で”抑えたつもり”?はぁ…、いつまで経ってもツキの感覚には慣れないなぁ。





深い溜息を繰り返す私に、何回も「悪かった。」を連呼してくるツキだけど、心が込もってなかったら意味ないんだからね?と頬を膨らませる。





…もういいや。とりあえず着替えないと、”あの人”が帰ってきちゃう。





少し、いや、かなり憂鬱な気分になった心を奮い立たせて、急いでカバンの中から服を取り出す。





そして、早業の如くものの一瞬で着替えて、汚れた服を紙袋に入れてからトイレを出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る