第14話

あの変な男に絡まれて路地裏を抜け出してから、あたしはいつもの家近くの公園のトイレにいた。





早速カバンからクレンジングオイルを取り出し、いつものように満遍なく顔に塗りたくってから、水でバシャバシャと洗い流す。





それから、髪の毛を掴んでズルっ、と下へと引っ張れば。”ウィッグ”の下に隠れた”真っ黒”の髪が姿を現した。





はぁー…、と深い溜息を吐き出しながら顔を上げれば、鏡の中の自分と目が合った。





お…っと、コレも外さねぇとな。





そう思いながら手を伸ばしたのは、目。所謂”カラコン”を両目から外して再び鏡に目を向ければ、”茶色”と”薄いグレー”の瞳が映っていた。






―――何で、私って…、片方は普通の茶色なのに、もう片方はこんな色なのかなぁ…。






そう、悲しそうな声で呟くあの子の姿が脳裏に浮かんだ。





その時。





――”ツキ”?





あの子が、あたしの”名前”を呼んだ。





――起きたのか?…”月耶”。





”ツキヤ”





これが、あの子の名前。

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