第13話

『お前…、ほんとに来たのかよ。』





思わず呟いた俺の言葉には当然の如く無反応で、鋭い視線を向けてくる。





「…どっちだ。」





たった一言。それだけ言ってくる奴に、つい溜息を零した俺は悪くない。





『はぁ…、電話でも言ったけどな、今から追い掛けても、』





「どっちだ。」





………。





…まじで。毎回毎回言葉遮ってんじゃねぇよ!!そんで人の話聞かねぇ奴だなコイツは!!





と、いう本音は押し込めて、「あっちだ。」とだけ伝えた瞬間、俺の方には見向きもせずに無言でその方向に走り出した奴には、もう何も言うまい。





あーもう勝手にしやがれ。





黒姫が消えていった方向に走って行くアイツの背中を、ガシガシと頭を少々乱暴に掻きむしりながら見送った後。





 


















『…あ、アイツ、バイクどうすんだよ…。』







そんな俺の呟きが、誰もいない路地裏に寂しく響いたのは、言うまでもない。

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