第11話

――side









『…ちぇー…、せっかく黒姫に会えたのになー…。』




ぽつり。誰に言うでもなく、っていうか俺1人しか居ねぇんだけど、思わずそう呟く。




つか、それにしてもなぁ…と辺りを見回せば、何とも言えない惨状が広がっている。




今まで数え切れねえほどの喧嘩の後を見てきたが、断トツでコレが一番酷い。どっからどう見ても死体にしか見えねぇ。




そう思いながら、さっきまで目の前にいた黒姫の姿を思い出す。




噂では聞いてたが、実際に見るまでは全く信じてなかった。…まさかほんとに、女だったとは。しかも、見た目はただのケバいギャル。




だが、普通のそこら辺にいるギャルとはどこか違った雰囲気で、まるで素顔を隠すかのような濃い化粧。しかも男みてぇな口の悪さで、俺のことも知らねぇ様子だった。




…はっ、面白ぇなぁ。




”アイツ”が探してる時点で既に興味を持ってたが、こりゃますます興味が湧いてくるな。




さて、と。アイツに自慢してやろうか。




くくっ、と笑いを噛み殺しながらスマホを取り出し、お目当ての人物の番号を見つけてタップする。




数回コール音がした後、プツ、と途切れ、




[…何だ。]




そんな、寝起きとも取れるような気だるげな声が、耳元から聞こえてきた。




『なぁなぁ、俺さっき、誰に会ったと思うー?』




前置きは無しにして、唐突にそう切り出す。




[…………、]




『っ、待て待て待て!早まるな!切ろうとすんなよ!?』




[…チッ。さっさと用件を言え。]




あっぶねぇ…、コイツ切ろうとしてやがった…。何も喋らねぇかと思えば、何となく気配で切ろうとしてるのが分かった。




『はぁ…。分かった分かった、用件だけ言うわ。…さっき、黒姫に会った。』




”黒姫”




その単語を出した瞬間。






[場所を言え。]






ガラッと、一瞬で雰囲気が変わったのが電話越しでも伝わってきた。

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