第10話
男の意図が分からず固まっているあたしの目の前で、未だに「まじかー、本物かよ!やべー!」などと叫びまくっている。
…こいつ、やべぇ奴か?とドン引きの目を向けていれば、
「あ、俺変な奴じゃねぇからな!?そんな目で見んな!」
そんな視線に気付いたのか、焦ったように弁解してくる男。
『あー…、で?何?あたしになんか用でもあんの?』
めんどくせぇな…と思いながら、男の言葉をスルーしてそう聞いた。
早くここから出て着替えてぇ…。あの子が起きる前に全部終わらせねぇと。
「いや、別に、用ってほどのモンじゃねぇけど…、」
黙って男の返答を待っていれば、何となく歯切れが悪い言い方でそう返ってきた。
『はぁ?だったらどういうつもりなんだよ?』
早く帰りてぇのに、こいつのせいでどんどん無駄な時間が過ぎていく。その事実にイラッとして、口調が荒くなる。
「まぁ、ただ、噂の黒姫に会ってみたかっただけっつーか…。」
『はぁ…。そんなくだらねぇ理由かよ?』
あたしに会ってみたかった?はっ、しょうもねぇ理由だな。
「わ、悪ぃ…。」
機嫌の悪いあたしの様子に、初対面にも関わらず素直に謝ってくる男。…こいつ変わってんな、と白けた目を向けた。
『じゃあもう用は済んだよな?あたしは帰るから、じゃあな。』
そう言ってから、さっさと踵を返す。これ以上こいつに構ってる暇はねぇんだよ。
「っえ、お、おい!ちょっと待てよ!」
後ろからそんな声が聞こえたが、もちろん無視してそのまま路地裏を出た。
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