第9話
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はぁ…、と溜息を1つ零して、静まり返った路地裏を見渡す。
…また、やっちまった。
周りには、文字通り”グチャグチャ”になった男達の山。腕やら足やらがあらぬ方向に向いている奴もいるし、全員が見事に血だらけだ。
誰かが呼んだのか途中で更に人数が増えたけど、幾ら雑魚が増えようがあたしには関係ない。
自分の両手と服を見下ろせば、こっちも返り血で血まみれ。あんなに殴ったのに、拳は少し擦り切れて血が滲んでいる程度。…これぐらいなら、バレないか。
声が聞こえないから、まだあの子は寝ている。起きる前に、ここから早く出て手を洗って着替えない、と―――、
「う…、お、びびったー。何だよこれ、えぐ。」
これからの行動を頭の中で考えながら歩き出そうとした瞬間、突然背後から、何ともこの場にそぐわない緩い声が聞こえた。
な…、こいつ。全く気配を感じなかった。そんな驚きを隠してゆっくりと振り返れば、暗がりではっきりとは見えないが(恐らく)1人の男が、「死んでんのか?」と言いながら倒れている男の身体を軽く足で揺すっているのが見えた。
…まぁ、死んではねぇけど、虫の息だろうな。男の発した言葉に心の中でそう返していれば、おもむろにその男が顔を上げる。
「…あ、お前。”黒姫”?」
私の姿を捉えた男は、僅かに目を見開きながら小さくそう呟く。その視線は、私の左手首を凝視していた。
…あー…、めんどくせぇなぁ。無造作に後ろ髪を掻きむしりながら内心愚痴を零す。
『…だったら、何?あんたもあたしと喧嘩してぇの?』
だるそうな雰囲気を隠しもせずにそう言えば、面白そうに口角を上げた、と思った瞬間。
「まじでお前黒姫なわけ?やっべー、まじ感動。やっと会えたわ黒姫!」
何故か目をキラキラさせて、嬉しそうな声で叫ぶその男。
『…はぁ?』
思わず間抜けな声が出てしまった。
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