【飛鳥と広樹 綾子side】
飛鳥とは、幼稚園の頃から親同士がツレで仲良く遊んどった。飛鳥の相棒の鳥居綾子(とりいあやこ)です。
幼稚園の頃、飛鳥にはひろ兄という兄貴がおった。家庭の事情で、ひろ兄は飛鳥パパのお爺ちゃんの所で住んどるけど、そのことを飛鳥は知らねぇんだよ。
中1の頃から飛鳥は広樹の事がずっと好きなんだけど、同じ頃から広樹も飛鳥の事が好きなんだよ。両思いなのに、飛鳥は広樹の気持ちに全く気付いてねぇで苦しんどる。
飛鳥はアタシ以外に広樹が好きだと言ってねぇけど、態度を見れば周りも気付くのに、それにも気付いてねぇ。
当然、広樹も飛鳥の気持ちを知っとる。
広樹も態度に出しとるから、当然周りも飛鳥の事を好きだと気付いとるのに、本人の飛鳥は全く気付かねぇ。アタシも広樹も参っちゃうんだよ。
そんな飛鳥と広樹の恋愛なんだけれど……
2人共、めちゃんこモテるからファンクラブがある。広樹も飛鳥もファンクラブがあることを知っとる。それには、飛鳥も自分のファンクラブの人たちを相手にしてねぇし、興味もねぇから気付かねぇフリをしとった。
告白をされとるから当然気付いとるけど、「アタシの事を知らねぇじゃん。アタシの顔が好みなだけだ」と言っとる。
そんな態度をしとるから、周りからは優越感に浸っとると言われとる。
夏休みに飛鳥が友達に頼まれてアキラくんと会ったのが、きっかけになってアキラくんと飛鳥は付き合うことになったんだけど、飛鳥は何度も明くんに断ってた。
アキラくんは、飛鳥に好きな人がおるのも分かっとるのに、口説いとったみたい。
広樹以外には興味がねぇのに、広樹のことでは鈍感過ぎるのか、自信がねぇのかは不明だ。
広樹は飛鳥とアキラくんが付き合っとることを知っとる。
知った時はちょこっと落ち込んどったが、みんなの前では態度に出さねぇで、いつもの素っ気ねぇ態度をしとった。
広樹が気付いたのは、アキラくんが入っとる紅櫻に広樹も入っとるからだ。アキラくんが飛鳥と会った時に「アキラから高梨の香水の匂いで気付いた」と言った。それにアキラくんからも、彼女の名前が飛鳥だと聞いたみたいだ。確信したのは、アキラくんの携帯の待ち受けが飛鳥と2ショットを見せられて知ったみたいだ。
飛鳥は広樹が紅櫻に入っとる事も噂で知っとるし、もちろん広樹が悪で有名だった事も知っとるが、広樹から聞いとらんから信用しんと言った。
そんなことは広樹も飛鳥に隠しとったし、飛鳥の前では素っ気ねぇけど、優しく接しとった。
アキラくんが事故った時、広樹も一緒に正月暴走に行ってたから、飛鳥に連絡をしたんだが……飛鳥が病院にも顔を出さんことを心配して、広樹から連絡があった。
「はい、広樹、おめでとさん。今年もよろしく。正月早々どうしたの?」
『あぁ、昨夜、正月暴走に行ったんだが、アキラが事故って亡くなった』
かなり落ち込んだ感じで広樹が言った。
「はっ! そのこと飛鳥に言ったの?」
予想外の言葉を聞いて、ビックリした。
『あぁ、だが、いきなり大声で、暴走族なんか大嫌いだ。広樹とは絶対に付き合わん。けど、ずっと近くにおりたい。アタシの隣でずっと一緒に居ってほしいと言われたんだ。高梨は俺が紅櫻に入っとるのを知っとるのか?』
さっき以上に落ち込んどる広樹は、言い終わると溜め息を吐いた。
「はっ! 飛鳥は広樹が紅櫻に入っとることは知らねぇ。でも、それは飛鳥の本音だよ。たまに落ち込んどると、思っとることを口に出すことがあるんだよ。本人は気付いてねぇけど、飛鳥の本音を聞いたんだ。で、広樹はどうするの?」
ちょこっとでも広樹を励ますつもりで、飛鳥の事を教えた。
『言われて考えたんだが、俺は高梨のことをほっとけねぇ。紅櫻をやめて高梨の近くに居ってやりてぇ〜』
だいたい想像はついたけど、やっぱそうなっちゃうだ。その言葉は、硬い決断のように聞こえた。
「広樹、そんな簡単に決めて大丈夫なの? 紅櫻に入りたくて入ったんじゃねぇの? 1人の女の為にやめたと言われる可能性だってあるんだよ」
試す訳じゃねぇが、飛鳥の独り言を聞いて、自分のやりたかった事を忘れたと思って言った。
『あぁ、そんなことは言いたいヤツは勝手に言わせとけばええ。紅櫻に入っとることを知って、高梨が離れていく方が辛い。紅櫻のことで高梨を手離したくねぇ。高梨は俺とは付き合わねぇと言ったが、俺は高梨を影なりに守ってやりてぇ〜んだ』
好きな人に、それだけ思われとる飛鳥が、めちゃんこ羨ましいと思った。
「広樹の気持ちは分かった。飛鳥のことを一緒に守って行こう。飛鳥の本音を聞いて、今まで以上に好きになったんとちゃう? 時間掛かると思うけど、飛鳥も広樹と付き合うと思うよ。年末に広樹から告られたら、すぐにアキラくんをポイして付き合うと言ったからね」
『今はムリだが、高梨は俺と付き合うと言ったんだな。今は高梨が俺の近くに居ってくれるだけでえぇ。綾子、悪りぃが高梨に連絡して一緒に居ってくれねぇか? もちろん、俺も一緒に居るが、どう接してえぇか分かんねぇ』
ちょこっと元気になった広樹は、踏み止まらず前向きに考えだした。
「分かったよ。じゃあ、飛鳥に電話をしてみる」
そんな会話をして電話を切った。
元旦の昼ごろ、飛鳥に電話をしたんだけど、当然飛鳥はアキラくんが亡くなったことで落ち込んどった。
すぐに飛鳥の家に行って話を聞いた。
「頭の片隅で、なにかが動き出しとる」
アキラくんが亡くなったショックで、おかしなことを言っとるのかと思った。話を聞いとると、ひろ兄のことを思い出したみたいで、広樹が消えるのが嫌だと言った。
そんな状態だったから、広樹と話し合って、飛鳥の近くで様子を見ることにした。
広樹は飛鳥を心配して、話をほとんどしんかった。って言うより、何を話し掛けたらえぇのか分からんみたいだ。
そんな広樹だったから、飛鳥と2人の時に「葬式だけでも行って、最後に顔を見てきたら」と言ってみたが、やっぱり拒否した。
広樹はアキラくんの通夜と葬式に出席をしとったが、終わるとすぐに飛鳥に連絡をして一緒に居った。
広樹は飛鳥に気ぃ遣ってアキラくんのことを言わんかったし、何を話せばえぇのか分からんで、黙って飛鳥の隣に座っとることが多かった。
アキラくんのことがある前から、広樹はアタシとは平気で話しとったが、飛鳥とはあんま話さんかった。
用事があると、広樹に任せた時も一緒の態度をしとったみたいだ。泣いて目が腫れとるのを広樹も当然気付いとるから、何を話してえぇのか分かんねぇみたいだ。
広樹は飛鳥に優しかった。アキラくんのことがある前でも優しかったのに、そのことがあってから広樹はめちゃんこ飛鳥に優しかった。
普段、3人で居っても素っ気ねぇ態度をする広樹だったが、表情は今まで見たことがねぇくらい優しい顔をしとった。
そんな心配したり、優しい顔を見た飛鳥は、今まで以上に広樹のことが好きになった。
それなのに、お互いに気ぃ遣い過ぎて何もしんかった。
広樹は飛鳥のことを抱き締めたり、手を握ることも出来んかった。普段の広樹からは考えられねぇくらい、純粋に飛鳥のことを大事にしとった。
アタシを含めて他の女を呼ぶ時は、呼び捨てで名前で呼んどったが、飛鳥の名前を呼べんかったから、飛鳥だけは高梨と苗字で呼んどった。
それくらい飛鳥に対しては、広樹は純粋だった。
飛鳥に告白をすれば良かったのに、そんなことが出来んで居ったからね。
でも、飛鳥は広樹にめちゃんこ甘えたかったと思う。
2人共、そんな思いをしとったが、みんなの前では広樹だけではなく、飛鳥もアタシも素っ気ねぇ態度と言い方をしとった。
広樹とアキラ君のことも知らんかった。
関係を知った時、広樹が悪で有名なことを知った時、広樹が紅櫻に入っとることを知った時、飛鳥の気持ちは、どうするんかな? まぁ、噂は聞いとるから、ショックや落ち込む事もねぇし、広樹から離れる事もねぇ。
逆に、飛鳥とアタシのコンビのことを知った広樹はどうするんかな?
飛鳥とアタシは、普通の女の子で通しとるけど、実は遊んどるから一部では有名になっとるんだけど、名前が出とらんで広樹も知らんことが多いんだよ。
そんな飛鳥と広樹は、どんな展開になっていくんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。