【綾子side】

 飛鳥のことを心配しとるは、アタシと広樹だけではねぇ。他にも居った。それはアタシの兄貴たちだった。

 飛鳥の兄貴のひろ兄と兄貴たちは、幼馴染みで今もしょっちゅう会って仲良いツレだ。

 最初、3人とも紅櫻に入ったんだが、ひろ兄とはケンカもしてねぇのに、兄貴たちはあるチームを立ち上げたけど、紅櫻の傘下にもなってねぇ。

 もちろん、そのチームは今も健在だ。

 ひろ兄がお爺ちゃんの家に行ってからは会ってねぇけど、兄貴たちは会っとるみたいだ。当然、ひろ兄が家に来ることはなかった。ひろ兄が住んどる所は、広樹の家の近くだった。

 アキラくんの事があって数日後、マサ兄の部屋に洗濯物を持って行った。

「綾、飛鳥になんかあったんだろう?」

 突然聞かれたアタシは、マサ兄を見ると心配そうな顔をしてた。

「うん、飛鳥の彼氏が事故で死んだ」

 誤魔化す事が出来ず、素直に答えた。

「はっ? 紅櫻のアキラか? その時、飛鳥は一緒に居ったんか?」

 驚いた顔をしたマサ兄は、アタシの顔を見て聞いた。たぶんマサ兄は、アキラくんが事故った事を知っとると思う。

「飛鳥は家に居った。紅櫻の正月暴走で……」

「誰からの情報で聞いたんだ?」

 大きく目を開いたマサ兄は、表情とちゃって冷静に聞いてきた。

「紅櫻の暴走に広樹が行ったから、飛鳥に連絡したけど、病院にも行かんかったし、通夜にも葬式にも行かんかった」

「で、飛鳥は大丈夫なのか?」

 冷静な言い方をしたマサ兄は、めちゃんこ心配そうな顔をした。隣に座ってた璃子さんまで、心配そうな顔をしとった。

「うん、アキラくんと付き合っとったけど、広樹のことがずっと好きなんだよ。アキラくんのことは大丈夫なんだけど、広樹のことを今まで以上に好きになっとるみたい」

「それで何でアキラと付き合ったんだ? 広樹が紅櫻に入っとることを飛鳥は知っとるのか?」

 不思議そうな顔をしたマサ兄は、璃子さんの顔を見て首を傾げて聞いてきた。

「夏休みに友達に頼まれて会ったんだけど、その友達が飛鳥の携帯番号を教えたんだよ。もちろん飛鳥は何度も断ったけど、アキラくんが諦めんから付き合いだしたんだよ。広樹が紅櫻に入っとることは知らん。広樹は飛鳥に隠しとるし、飛鳥には優しくしとる。元旦から毎日一緒に居る」

「広樹は飛鳥のことを好きなのか?」

「うん、飛鳥も広樹もお互い中1の時から好きだよ。でも、広樹は飛鳥の気持ちを知っとるけど、飛鳥は広樹の気持ちに気付いてねぇ。広樹が飛鳥に告白をすれば付き合うと、去年家に泊まった時に言ってた」

「分かった。綾は飛鳥のことを見てくれ、頼むぞ」

「うん、分かっとる。それと飛鳥は広樹の電話の時、ひろ兄の事を思い出したみたい。ひろ兄に会いたいと言ってた。取り敢えず飛鳥には、ひろ兄の事を広樹は知らんから言ったらアカンと言った」

「はっ? 広樹は飛鳥の事も、浩志の事も知っとるだろう」

 驚いた顔をして、マサ兄は聞いてきた。

 だよね、広樹は飛鳥と幼稚園の頃と小学校の時に一緒に遊んどるし、ヨシから飛鳥の事を好きだった事も聞いとるから、マサ兄が驚くのも分かる。

「飛鳥が変わり過ぎて、広樹は気付いてねぇけど、飛鳥しか興味がねぇみたいだよ」

「ふ〜ん。綾は飛鳥の事を頼むぞ」

 その事を言うと、さっき以上にマサ兄は心配した顔をした。

 マサ兄と話をしとったが、かなり心配した顔をしとった。

 マサ兄には言えるけど、カズ兄には言えんかった。

 双子でもマサ兄は冷静で話しが出来るけど、カズ兄は五月蝿いから話が出来んのよ。

 だが、不思議な事にカズ兄とマサ兄の会話はお互い冷静で話しとるけど、アタシと飛鳥の話には五月蝿いからね。

 マサ兄はアタシとの会話をカズ兄とひろ兄に話すと思う。

 マサ兄とカズ兄とひろ兄と飛鳥と広樹とアタシは、この先どう行動をするんだろう?

 飛鳥は広樹と付き合うのかな? 

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