第20話【夢の話】

元旦に綾子から電話があった。


「飛鳥、おめでとさん、今年もよろしくね」


いつもと変わらん明るい声で、綾子は新年の挨拶をした。


「綾子、おめでとう、こちらこそよろしくね。昨夜、広樹から電話があって、アキラくんが事故って亡くなったみたい」


こっちも新年の挨拶をして、アキラくんが亡くなったことを報告した。


「で、今、どこに居るの?」


知らん事だから、綾子は驚いて聞いてきた。


「家に居る」


「飛鳥、すぐに行くから待っとって」


「うん、分かった」


電話を切ると、綾子はホントにすぐ来てくれた。

家から綾子の家は、歩いて3分だった。


パパもママもリビングに居ったけど、関心がねぇから、そのまま部屋に連れてきた。


部屋に入ると、綾子はアタシの顔を見た。


「昨日、広樹と電話で話しとるとき、子供の頃のアタシと綾子とマサ兄とカズ兄とひろ兄が笑って遊んどるのが頭に浮かんだんだよ」


昨日の電話の時の事を正直に綾子に話した。


「そんな場面がなんで浮かんだの?」


不思議そうな顔をして、綾子が聞いた。


「分からんけど、ひろ兄のことを封印しとったのに、その場面が頭の中いっぱいに出てきた。やっぱ、ひろ兄に会いたいよ。どうして、居らんくなったんだろう。アタシが我が儘ばっか言っとったから、ひろ兄が嫌いになって消えたんだよね」


「飛鳥、そんなことねぇ。大丈夫だって、いつかきっと帰って来るよ。そんなこと、広樹には言ったらアカンよ。ひろ兄のことを知らんからね」


「うん、分かっとる。広樹もアタシの前から消えちゃうのかな? 絶対に広樹とは付き合わんし、甘えんし、我が儘も言わん。ただ、いつも隣に居ってくれるだけで幸せだから、それ以上は望んだらアカン」


不安に思っとる事を綾子に言った。


「広樹は絶対に飛鳥の近くに居ってくれるよ」


何故そう思うの? 

そう言って綾子は励ましてくれた。


「広樹と付き合わんかったら、別れることもケンカすることもねぇ。ひろ兄みたいに甘えたり、我が儘を言うこともねぇ」


「飛鳥、アキラくんのことがあって、ひろ兄のことを思い出しちゃったんだ」


そんな事は意識しとらんかったけど、ひろ兄の事を頭のどっかから引っ張り出したのかな? 


「綾子、アタシから離れたいなら、ムリしてツレで居らんでえぇよ」


これ以上、傷付きたくねぇから本心じゃねぇのに、綾子に言った。


「飛鳥、アタシは飛鳥とは大人になっても、お婆ちゃんになってもずっとツレで居る。そんなムリして、アタシのことを試さんでも大丈夫だよ。アタシは飛鳥の相棒だよ」


子供の頃から一緒に居るから、綾子には強がっても見透かされる。

そう言ってくれて、綾子に感謝した。


「今回の事もだけれど、カズトの時から思っとる事があるんだよね。高校卒業するまでに、地元のチームをまとめたいんだよ。そしたら、ちょこっとでもカズトやアキラくんみたいな人が減ると思うんだよ。ツレにはケンカ、薬物、売春は禁止をさせ、総長には下のヤツ等をちゃんと見させる」


アタシの夢を言ってみた。


「はっ? 飛鳥、その夢にアタシも入れて。飛鳥はアタシの相棒だから、コンビでデカい夢を一緒に見よ。そしたら、ツレが消える事も減るし、悲しむ事も減るからね。チームもツレも守って行こう。夢を叶えようね」


一瞬、驚いた顔をした綾子だったけど、アタシの意見に賛成してくれた。

やっぱ、子供の頃から遊んできただけあって、綾子は理解をしてくれた。


笑って綾子はアタシの前に左手を出したから、綾子と握手をして笑った。

いつも、そんな相棒が近くに居ってくれるから、めちゃんこ感謝した。

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