第17話【猫のおじちゃんの道場】
次の日。
綾子と久し振りに猫のおじちゃんの道場に行って、自分たちのやりたいように遊んどった。
たまに、猫のおじちゃんの息子が相手をしてくれて練習もしとった。
その道場はパパの知り合いとかではねぇ。
アタシも綾子も空手をやめてから、たまに教えてもらっとるけど、中学になってから完全に空手をやめたと思っとるから、パパとは関係ねぇ道場に行った。
最初の出会いは、猫のおじちゃんが道場の先生だった。
そこの猫を可愛がっとると話し掛けられて、空手の話をしたのがきっかけだった。
そのとき、猫のおじちゃんが「いつでも道場に遊びにおいで」と言ってくれた。
中に入って行くと、猫のおじちゃんと息子が話とった。
「ヤス、飛鳥ちゃんと綾ちゃんの相手をしてやれ。ヤスが相手だったら、飛鳥ちゃんも綾ちゃんも本気で大丈夫だ。ヤス、2人は強くなっとるから、真剣にやれ」
猫のおじちゃんに言われて、息子が相手になってくれるみたいだ。
「飛鳥ちゃん、綾ちゃん、今日は本気でやっても大丈夫だよ。さぁ、どっちが先かな?」
先に綾子が始めた。
やっぱ、綾子は本気でやっとるけど、左の回し蹴りは力を抜いとった。
もちろんアタシも右は本気だったけど、左は半分くらいでやっとると、綾子が8割まで大丈夫と言った。
久し振りに本気でやれて満足だ。
「飛鳥ちゃん、綾ちゃん、最初よりだいぶ強くなっとる」
「ホント? 小学校までマサ兄とカズ兄が相手をしてくれとったけど、中学に入ってからは相手が居らんからやっとらんかった。けど、ヤス兄が相手をしてくれるから、本気でやれるようになった」
「俺で良かったら、いつでも相手するからな」
「うん、また相手してよ。アタシも飛鳥も本気で出来る相手が居らんから、楽しかったよね」
「うん、めちゃんこ楽しかったね。また、相手して下さい。今日はホントありがとうございました」
「飛鳥ちゃん、初めて笑ってくれたね。いつも笑わんし、挨拶だけで話さんから、ホントに楽しかったんだね」
「ほだよ。普段の飛鳥はアタシとマコと涼子とヨシと広樹以外には、本気で笑うことしんからね。だから、学校でも優越感に浸っとると思われとる。でも、ツレにはめっちゃ優しいんだよ。友だちが困っとると助けるんだよ」
「そうなんだ。飛鳥ちゃん、また、いつでも遊びにおいで」
「はい、ありがとうございます。綾子、今日は帰ろう」
アタシ達は道場を出て、綾子の家に行った。
今年のストレスがなくなって、新年を迎えることが出来ると思った。
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