【カラオケ】

 次の日。

 昼頃から綾子の家を出て、カラオケに行く前にファーストフードでちょこっと食べながら話とった。

 階段を上がって来る音が聞こえたけど、待ち合わせもしとらんから、アタシと綾子は階段の方を向かず知らん顔をしとった。

「飛鳥、綾子、久し振り。コンビでどっか行くの? もしかして、またケンカするの?」

 声のした方を向くと、レディースの人が3人居った。第一声がケンカとはヒドい言い方だ。

 アタシ達に手を振って近付いてきた。

「ちゃうよ。アタシ達の顔を見てケンカはヒドくねぇ。1度もケンカなんってしたことねぇ。アタシも飛鳥も遊んどるだけだよ。挑発しとると殴られそうになるで、殴って遊んどるだけだよ」

 綾子が笑って文句を言うと、レディースの人たちは驚いた顔をして見とった。

「それにしても、悪魔と悪女は有名になっとるけど、みんな名前を知らんで悪魔と悪女と名付けとるんだよ。可愛い顔をしたコンビだと有名だよ」

「それって失礼だよ。確かに『名前を言ったら殺す』とは言っとるけど、悪魔と悪女はヒド過ぎだよ」

「それだけコンビが遊んだヤツが多いんだよ」

「まぁ〜ね。それだけ遊んでくれるヤツも多いからね。今日はカラオケに行って来るで、また話そうね」

 悪女と悪魔の噂を教えてくれて笑って話をしとったけど、カラオケに行くことを言うと会話が終了した。

 レディースの人たちは、アタシ達とちょこっと離れた席に座った。会話が終わると、お互い知らん顔をして自分たちの話をしとった。

 ファーストフードを出て、カラオケに向かったんだけど、冬休みだったからカラオケをする中学生や高校生が多かった。予約をして、近くの公園で時間を潰して綾子と話しとった。

 人が多い場所には居らんようにしとった。有名になってきとるのは、自分たちでも自覚しとる。中学でも悪魔と悪女の噂が流れとる。同じ中学の人が、高校生に脅されとるのを何度か助けたのに、そんな噂が流れるから困っとるんだよ。

 広樹が知ったら最悪。

 アタシと綾子は、普通の子で通しとるのにさぁ。もちろん、広樹はアタシと綾子が普通の子だと思っとる。

「飛鳥、あそこ見て。涼子、何か脅されとるよね」

 話しとると突然話が変わった。綾子に言われて、顎で示された方を見た。

 涼子の姿が見えるけど、いつもとちゃう態度だったから、ちょこっと様子を見とった。

「うん、涼子は1人なのに、何で4人に囲まれとるの。それに中学生に見えんよね」

 ベンチから立ち上がって、涼子に近付いて行った。顔を引き攣らせて下を向いとるのに、1人の女が涼子を殴った。涼子が何かした訳でもねぇ。無抵抗だったのに、殴ったのを見てムカついた。4人に近付いて行って、無言で相手の女をいきなり殴った。

 関係ねぇアタシ達に、いきなり殴られたことを怒って、殴り合いになった。4人を相手に遊びだすと、すぐに終わっちゃった。

「飛鳥、綾、助かった。ありがとう」

「うん、良かったね」

 涼子とちょこっと話をしとると、時間になったから、別れてカラオケに向かった。

 いつもマコと一緒に遊んどるから、涼子が1人で居るのは珍しいと思ったら、やっぱり待ち合わせをしとったみたいだ。いつも、ギリギリか遅刻をするから仕方ねぇけど、マコが早よ来れば、涼子は殴られる事もねぇのに。

 カラオケで満足するまで歌って、しっかりストレス発散が出来た。

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