第14話

「はっ! 紅櫻のアキラ! 飛鳥、いつどこでアキラにナンパされて付き合ったんだ? 俺はアキラと付き合うのはぜってぇ〜反対だからな。今すぐ別れろ。アカン! ぜってぇ〜アカン! 今すぐに別れろ、今すぐにだ! もっと他の男を好きになれ! とにかくアキラはアカン!」


低い声で言ったカズ兄を呆然とアタシと綾子は見とった。

普段から口五月蝿いけど、アキラくんの名前を出しただけで、眉間に皺を寄せて反対されると思わんかった。


「カズ兄、ちゃうよ。飛鳥はアキラくんにナンパされとらん。アキラくんが飛鳥に告白して、仕方なく付き合っとるだけだから、飛鳥は好きになっとらん。飛鳥は別に好きな人が居る」


必死で綾子が、カズ兄にアキラくんの事を言ってくれた。

風呂の方からドアが開く音がして、マサ兄が出てきた。


「カズ、何、飛鳥に言っとるんだ?」


たぶん風呂場までカズ兄の声が聞こえたから、マサ兄が聞いたと思う。


「飛鳥が紅櫻のアキラと付き合っとるんだ。俺はぜってぇ〜反対だ。飛鳥と綾がケガさえしんかったら、どんだけケンカして帰ってきてもえぇが、アキラとは今すぐに別れろ」


マサ兄に説明したと思ったら、カズ兄はいつのまにかアタシに言っとるじゃん。


「飛鳥、部屋でムッちゃんのツメを切ってやってくれ。綾、テーブルの上に爪切りが置いてある。カズとちょっと話してから行く」


顔を顰めたマサ兄はカズ兄を見て、アタシと綾子を見て言った。


「分かった。飛鳥、マサ兄の部屋に行くよ」


アタシの手を引っ張った綾子は、マサ兄に言って階段を上がって行った。


「マサ兄とカズ兄はホントに双子なのか? マサ兄は冷静に話を聞いてくれるけど、カズ兄はよぉ〜話すで参っちゃうんだよ」


マサ兄の部屋でムッちゃんの爪を切りながら、綾子がマサ兄とカズ兄の話をした。


確かにマサ兄とカズ兄は顔は似とるのに、性格は正反対だけどケンカをしねぇし、アタシや綾子に対しては優しい。


「全然ちゃうよね。でも、カズ兄はケガしんかったら、遊んで帰って来るのを許してくれたから、五月蝿く言われんね」


「ちゃう。カズ兄はアタシ達がそこまで遊んどるのを知らんからだよ。ただ、噂になっとるのは知っとると思うけど、それってやられた相手と被害に遭った人しか知らん。けど、アタシと飛鳥の名前と顔を知らんから大丈夫だけれど、半分も知らんから言っとるだけだよ」


やっぱ兄妹だけあって、綾子はカズ兄の事をよぉ〜分かっとる。


「ほんじゃあ、カズ兄や広樹には絶対にバレんように遊ばなアカンね」

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