第13話

マサ兄と話しとると、ケーキを持って綾子が部屋に戻ってきた。


「飛鳥、ありがとさん。アタシも相棒の飛鳥のことをちゃんと守るから、マサ兄は安心して。ケーキを持ってきたから、一緒に食べよ。マサ兄、後で飛鳥と一緒にムッちゃんを見に部屋に行く」


聞こえてたみたいで、話してた事を綾子が言った。


「あぁ、分かった。飛鳥も綾も昔っから変わんねぇな。ケガして帰って来たら、カズが五月蝿ぇ〜からな」


呆れた顔をしたマサ兄は、カズ兄の事を忠告してアタシと綾子の顔を見て笑った。


「うん、そんなの飛鳥もアタシも分かっとるよ。ケガしとらんでも会うと、いつも口五月蝿いからね」


綾子の話を聞いて、マサ兄は笑って部屋に行ったみたいだ。


綾子の兄貴のマサ兄とカズ兄は、アタシ達の5つ上の双子で去年まで紅蝙蝠を仕切っとった。

マサ兄が総長で、カズ兄が副総長をやっとって、世間からは恐れられとる双子だった。


ショートケーキを食べて、マサ兄の部屋に行くことになった。

マサ兄とカズ兄の部屋は、以前、綾子たち家族が住んどった家なんだけど、今の家の裏にあるんだよ。

敷地は一緒だから、離れみたいな感覚なんだけど、ちゃんとした一軒家だった。


風呂場の電気が点いとったから、マサ兄が入っとると思った。

綾子と一緒にマサ兄の部屋に向かった。


階段を上がっとると、マサ兄の部屋のドアが開いた。

マサ兄が声を掛ける訳でもなく、人の気配がねぇと思ったら、ムッちゃんがアタシと綾子をじっと見とった。


「ムッちゃん、久し振りだね。元気だった?」


もちろん返事をしてくれる相手ではなかったが、声で分かったのか、階段を2段下りて来た。

階段でムッちゃんと話しとると玄関が開いて、カズ兄がアタシと綾子とムッちゃんを見た。


「カズ兄、お帰り。マサ兄にムッちゃんのツメを切るように言われて来たんだけど、お風呂に入っとるみたいだから、綾子とムッちゃんと遊んどった」


「ただいま。最近、飛鳥が来ねぇからムッちゃんが寂しがっとったぞ。ムッちゃん、飛鳥に会えて良かったな」


ムッちゃんは知らん顔をして、アタシに抱っこされとった。


「ちゃうよ。おかんが塾に行かせるし、飛鳥は彼氏と会わんとアカンで時間がねぇの。だから、たまにしか来れんの」


よっぽど塾に行くのがイヤみたいで、綾子は眉間に皺を寄せた。


「はっ! 飛鳥、男が居るんか? どこの誰と付き合っとるんだ?」


驚いた顔をして、カズ兄はちょこっと大きい声で聞いてきた。

可愛くねぇけど、そこまで驚かれると

失礼じゃねぇ? 


「……紅櫻のアキラくん」


名前を言った瞬間、カズ兄は現役顔負けの顔をしてアタシを見た。

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