第11話

「アキラくんとは会わんの?」


「うん、年末は忙しいみたい。でも、年明けに動物園に行く約束した」


「飛鳥、昔から動物園が好きだったよね。ちゃうね、トラが好きなんだね」


「うん、好きだけど……動物園は広樹と行きたいんだよ。でも、ムリだと分かっとる」


「あっ! その左手の薬指」


左手の薬指を指さした綾子は、指輪をじっと見とった。


「あぁ、アキラくんに貰った。初のクリスマスだから、記念にプレゼントだって」


指輪を外して綾子に見せた。

指輪を受け取って、色んな角度から見とった。


「アキラくん、ホントに飛鳥のことが好きなんだね。高校生だから高価なものは買えんけど、イニシャルまで入っとるじゃん」


そう言って、綾子はニコニコ笑ってアタシを見た。


イニシャル? 

そう言われて指輪をじっくり見た。

【A TO A】と彫ってあった。


あの時、イニシャルを彫る時間なんてなかったはずだったけど……

それにしてもいつの間に……


「今まで気付かんかった」


あんだけアキラくんと一緒に居るときに見とったのに、指輪を嵌めてたから気付かんかった。


「アキラくんに興味ねぇから仕方ねぇけど」


呆れた顔をして、綾子がアタシの顔を見て言った。


「だって、断る理由があ〜へんかったから付き合ったけど、興味ねぇから気付かんよ。言ってくれんから分からんよ」


呆れた顔のまま、綾子はアタシを見て笑った。

呆れたを通り越して、もう笑うことしか出来ん感じだ。


それにしても、いつイニシャルを頼んだんだ? 


「相変わらず鈍感だよね。これじゃあ、いつまで経っても広樹の気持ちが分からんよね」


ニコニコ笑っとったけど、広樹の気持ちってなに? 

全然、分からんよ。

ただ、嫌われとらんことは分かっとる。


「分からんでも、えぇの。広樹とは今の関係で満足しとる」


呆れた顔をして、綾子は軽く溜め息を吐いた。

いつも広樹の会話になると、その顔をしてアタシを見とった。


アタシが鈍感なのか? 

でも、他の人の気持ちが分かっても、広樹の気持ちは全然分からんよ。


「あの女、飛鳥とアキラくんを会わせといて、携帯番号まで教えといて知らん顔かよ」


「ほだよ。会うだけでえぇと言ったから、仕方ねぇと思って会ってやったのに、携帯番号まで教えといて知らん顔だもんね。4ヶ月もしつこく口説かれて、挙げ句の果て断る理由ねぇから付き合うことになったんだよ」


アキラくんと会わせた友達のことを綾子も怒っとったけど、そのことがあってからアタシ達に友達は話し掛けてくることもなかった。

無責任な行動が余計に腹が立っとった。


「飛鳥はファンクラブのヤツからも告られとるじゃん」

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