第8話

同じものを頼んだから、皿の上を見比べる必要もなかった。

紙ナフキンで包まれたスプーンを手に取った。

見ためも匂いも食欲をそそっとった。

さっきまで、そんなにお腹も減っとらんかったのに、急にお腹の虫が催促してきて待ち切れん感じだ。


「いただきます」


右手に持ったスプーンを、オムライスに向けた。

口の中に入れると、フワフワの卵がとろける感じで、それがまたケチャップライスと絶妙な感じで幸せな気分だった。


「おいしい!」


自然に出ちゃうくらいだった。

目の前に座っとるアキラくんの反応を見たが、まだ1口も食べとらんでアタシを見て笑った。


「飛鳥ちゃんが喜んどる顔を見とると、俺まで嬉しくなるよ。俺も早よ食べるぞ」


アキラくんはオムライスを1口食べた。


「ホントおいしい!」


その言葉に頷いてから会話するのも忘れて夢中でオムライスを食べ終わると、まだ待っとる人が居ったから、すぐに店を出た。


買い物に誘われて店に入ると、クリスマスが近い百貨店の中は、あっちこっちにクリスマスツリーやサンタの置物が置いてあった。

雑貨屋さんの前を通ると、期間限定のクリスマス商品が並べてあって、赤や緑の物が多く並んどったし、可愛いクマのぬいぐるみまで、サンタの格好をしとった。


何を買いに来たのか分からんけど、アキラくんと手を繋いで通り過ぎて行く店をフラフラ横を向きながら見て歩いとると、急に明くんが止まった。

店を見るとジュエリーショップだった。


誰かにプレゼントするんかな? 

そんな相手が居るなら、アタシと付き合う為に4ヵ月も口説く必要ねぇじゃん。

 

ショーケースの中にはキラキラした綺麗なリングや、可愛いネックレスなどが並んどった。

そこに入っとる商品を夢中になって見とった。

顔を上げると、アキラくんが細身で小柄な女性と話をしとった。

何を話しとるかは聞いとらんかった。


「飛鳥ちゃん、気に入った物があった?」


呼ばれてショーケースから目を離してアキラくんの顔を見ると、笑顔でアタシを見とった。

さっきまで話しとった小柄の女性の姿はなかった。


あれ? 

小柄な女性は? 

そう思っとったら、前から営業スマイルで歩いてきた。


「お待たせしました。こちらでございますね?」


小柄な女性が小さめの箱を開けてアキラくんに見せると、ちょこっと照れ臭そうに顔を赤くしてコクンと頷いた。


そんな照れ臭そうにする相手が居るのに、その人と一緒に来れば良かったじゃん。


「こちらのお嬢様ですか?」

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