第6話

人としては好きなんだけれど、恋愛ではちゃうと思うんだよ。

アキラくんと毎日会いたいとか、電話したいとか全然思わん。


週に2、3日のペースでアキラくんと会っとる。

けど、アキラくんが会いたい時に会っとるだけで、自分から会いたいで会ってと一言も言っとらん。

会わな会わんでえぇと思う。


学校帰りに会っとったから、お互いに制服姿だった。


知り合いが多いアキラくんは、ちょこっと怖そうな人たちから話し掛けられとった。

一緒に居るときはあんま話をしんかった。

駅前にアタシも知り合いは居ったが、アキラくんと一緒に居るときは話し掛けてこんかった。


携帯もよぉ〜鳴っとったけど、取り敢えず携帯には出るんだけど……


「急用か? ……今、デート中だ。あとで掛け直す」


毎回そう言って電話を切っとった。


携帯の待ち受けを見てから、アタシの顔を見て笑っとった。

全然興味があ〜へんかったから、携帯の待ち受けが何になっとるかも知らん。


8時過ぎになると、アキラくんが家の近くまで送ってくれとった。


お互いのことを何も知らんと思う。

だって、アキラくんの誕生日も血液型も家すらも知らんかったし、アタシも教えることをしんかった。

ただ、知っとるのは名前と携帯番号と地元の高校だけだ。


アキラくんのツレも知らんし、どんな態度をしとるのかも知らんかった。

けど、アタシの前で見せるアキラくんは、16歳の純粋な少年だったと思う。

外見とは全然違っとったし、暴走族に入っとるとは思えんかった。


午前中で学校が終わった。


駅前のコンビニで待ち合わせをしとった。

待ち合わせ場所に行くと、すでにアキラくんは待っとった。


いつも待っとってくれるアキラくんなんだけど、今日はアタシの方が早いと思っとったのに……どうして? 


「ごめんね。また待たせちゃった。それにしても早過ぎじゃあ〜へん? ちゃんと学校に行っとった?」


ちょこっと疑う目付きで見とったが、アキラくんの笑顔に誤魔化されてしまった。


「ちゃんと行っとった。それよりも、何処でご飯食べる?」


「最近、オムライスの店が出来たから、そこに行かん?」


「じゃあ、そこに決定。飛鳥ちゃんの案内で行こう」


アキラくんはアタシの手を握って、駅から歩いて10分くらいで店に着いた。


ドアを開けると、数人の人が入り口のソファーに座って順番待ちをしとった。


終業式だったから、子供連れのママ友とビジネススーツを格好良く着こなした中年のおじさんグループがテーブルを埋めて居った。


「混んどるね。飛鳥ちゃん、お腹大丈夫?」


座る場所があ〜へんかったから、アキラくんはキョロキョロと店の中を見て笑顔で聞いてきた。


「うん、大丈夫だよ」

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