第5話

綾子と広樹とは1年の時から同じクラスだった。

その時から、広樹とも仲良くなって話をしとった。

いつも素っ気ない態度をしとったが、たまに優しい顔や笑った顔をしとった。

普段、女の子と話さん広樹だが、何故かアタシと綾子には普通に話し掛けてきとったし、家にも遊びに行ったこともあった。


格好を聞いて分かると思うけど、広樹は典型的な不良だった。

アタシと綾子は普通の女の子? 

表の顔はそう思われとる。

でも、駅前や学校の1部の人から、アタシが悪女、綾子が悪魔と呼ばれとった。


「高梨、冬休みどっか行くんか?」


綾子と話しとったのに、広樹が突然話し掛けてきてビックリして答えれんかった。


「飛鳥は彼氏のアキラくんとデートしたり、アタシと遊びに行く予定でいっぱいなの」


「彼氏のアキラくんとデートなんか?」


答えることができんかった。

そんな時、タイミングよくチャイムが鳴ったのと同時に担任が入ってきた。

話が途中になったが、みんな自分の席に座った。


終業式が終わって明日から2週間くらい、広樹の顔を見ることが出来んのは残念だった。


夏休みに友達に頼まれて会ったのが、アキラくんとの出会いだった。

会うだけだったのに、友達が携帯の番号を教えたから、付き合うことになったんだよ。


それも、ずっと断っとったんだけど……

『会ってくれんかったら、俺の望みが叶わん。取り敢えず付き合って俺のことを知ってから、断ってくれんと納得出来ん。付き合ってくれんと土俵にも上がれん』


そう言われて、仕方なく付き合うことになった。


そこまで言われたら、断る理由がねぇじゃん。

取り敢えず、11月中頃から付き合うことになった。


別に悪い人ではあ〜へんかったが、広樹のことを好きな気持ちは変わらん。

相手のことを全然知らんから、あまり気がのらんのよ。

ううん、付き合う気ねぇから、いつ別れてもえぇと思った。


初彼氏のアキラくん。

この辺りでは有名な紅櫻(べにざくら)という暴走族に入っとって、年はアタシの2つ上。

鋭い茶色の瞳をクリクリとさせ、短髪の栗毛色の髪。

女の子から逆ナンされることが多く、もったいないくらいモテモテの彼だった。


どこを気に入ってくれたんか、猛烈なアタックをされてから、毎日メールで今日の出来事などを忠実(まめ)に連絡して大事にされとると思う。


メールの返事をしん時でも『俺が好きで勝手にやっとることだから、気にしんでえぇ』と言ってくれとった。


広樹に対する感情とはちゃうけど、好きなのかな?

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