第4話

みんなは長期休みになると、『おじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに行く』と言うけど、アタシは行ったことがねぇ。

だいたい、おじいちゃんやおばあちゃんと会った記憶がねぇ。

生きとるのか、死んどるのかさえ分からんのだよ。

そんなの普通の家庭では考えられんと思うけど、それがアタシの家では普通なんだよ。


そんなことを考えて歩いとると学校に着いとった。

教室のドアを開けると、それぞれ仲良しグループで話をして笑っとった。


「飛鳥、おはよう!」


幼稚園の頃から仲良かった綾子(あやこ)が、後ろから元気な声で挨拶してきた。


それと同時にアタシの肩をバシッと叩いてきた。

振り返って綾子の顔を見ると、綺麗な二重瞼で大人っぽく薄化粧をして笑っとった。


「……お、おはよう!」


ちょこっとビックリして、すぐには言葉が出んかった。


自分の席に鞄を置いて座ると、綾子が前の席の椅子を引っ張り出して座った。


「いつカラオケ行く?」


「綾子の都合のえぇ時でえぇよ」


「でも、アキラくんとデートもあるんじゃねぇ?」


「確かにアキラくんとは会うけど……」


「まぁ、いっか。ところで、アキラくんのこと好きになってきた? 何ヶ月になるんだっけ?」


「……う〜ん、分からん。えぇ人だとは思うけど……1ヶ月ちょっとだと思うよ」


「そっか。やっぱり広樹(ひろき)がえぇんだ?」


言い終わると、綾子はニコニコ笑って広樹が居る方をチラッと向いた。


アタシの好きなのは1年以上前から、ずっと広樹だけなんだけど、告白する勇気がねぇから、ずっとツレで居ることを選択した。


広樹のことを好きな人が、めちゃんこ多くってファンクラブまであるんだよ。


そん中には、めちゃんこ可愛い子や綺麗な人も居るで、到底アタシには無理な願いだと分かっとる。

けど、幸い広樹に彼女が居る噂は聞いたことねぇのが救いだった。

もしそんな噂を聞いたら、ショックで学校を休んじゃうかも……


「お前等、いつも一緒に居るよな? 冬休みの計画でも立てとるのか?」


「ほだよ。でも、広樹には関係あ〜へん。あっち行って」


「お前が『広樹がどうの』と言ったから来ただけだ」


綾子と広樹の会話を黙って聞いとった。


それにしても普通の声だったし、離れとったのに……地獄耳なの? 

アタシの席は窓側の前の方だったのに、広樹は後のロッカーに座ってツレと話しとった。

それに教室の中も五月蠅かった。


広樹は背が高く、細身だが筋肉質。

いつも短い金髪の髪をドライヤーで立て。

笑うと目がねぇくらい目が細く、綺麗なブラウンの瞳をしとった。

素っ気ない態度で常に冷静だった。

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