第2話
「飛鳥、早よ起きんと遅刻するよ」
毎朝同じ時間になると、ママの声で反射的に目が覚めるが、もうちょこっとベッドに入ってた。
意識もちゃんとしとったけど、習慣って怖いと思うのが、いつも2度寝しちゃうんだよ。
今日こそは2度寝しんと思っとったが……やっぱり同じだった。
いつの間にか寝とったみたいで、気が付いたのは忙しそうにスリッパをパタパタさせて、階段を上がってくる足音だ。
それが何秒なのか、何分なのかは分からんけど、呼ばれて起きる間の空白の時間だった。
階段を上りきったみたいで、部屋に向かって歩くパタパタの音が段々と大きくなり、あと数歩で部屋のドアが勢いよく開くのが分かった。
ガチャ‼︎
「飛鳥、早よしんと遅れるよ」
部屋に入るか、入らんかの時に声がはっきり聞こえ、ドアの方を向いて首を上下に動かして返事をした。
そんな反応で了解するような人ではない。
ベッドの前まで歩いてきて、これまた豪快に大切な布団を一気にガバッと剥がした。
さ、寒い、寒過ぎ。
「早よしんと、ホントに遅刻だよ。髪もセットしなアカンし、ご飯を食べて、顔を洗って、いろいろやっとると時間がないよ」
忙しそうにちょこっと早口で言って、ママはアタシの手を引っ張って強制的に起こした。
そこまでして、やっと満足そうな顔をしてニヤッと笑った。
「起きたね。ご飯だよ。早よ支度して」
ママはアタシの髪をグシャグシャにして、部屋を出て行った。
本人はそんなつもりでやっとらん。
ただ、アタシの頭を撫でとるみたいだけど、毎朝グシャグシャになっとるんだよ。
それが毎朝の地獄の日課だ。
けど、その日課も当分あ〜へん。
明日から待ちに待った冬休みだもんね。
あっ、遅くなりました。
アタシ、中学2年の高梨飛鳥(たかなしあすか)。
この時間にゆっくり自己紹介が出来んけれど、徐々にアタシのことを教えていきます。
方言がめちゃんこ出るけど、よろしくお願いします。
「飛鳥、ご飯だよ! パパも待っとるで、早よして!」
忙しい感じで、ママが早口に言った。
リビングのドアを開けて2階のアタシの部屋に向かって言っとるんだけど、ママの声は近所にも聞こえとるんじゃねぇかと思うくらいの大声なんだよ。
部屋を出る前にファンヒーターのスイッチを押して、リビングに向かった。
まだ、頭は寝とる感じでボーっとしながら、階段を下りた。
リビングに行くと、ママの味噌汁の匂いがしてファンヒーターもついとった。
地獄から天国に来たみたいな感じだった。
布団を剥がされてから、ずっと寒かった体に暖かい空気を感じた。
別に雪国に住んどらんのに、めちゃんこ寒いんだよ。
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