第035話 どうしよう?


 ジュリアさんの家で夕食を御馳走になった翌日は仕事のため、早く起き、出勤する。

 ゴールデンウィークということもあって、出勤している人は少ないものの仕事は真面目にこなしていった。

 そして、昼休憩になったので弁当を食べだす。


「あれ? 岩見君、今日は弁当なの?」


 隣の席に座っている先輩の女性社員が聞いてくる。


「あ、はい。そうですね」

「へー……」


 先輩は弁当をじーっと見てきた。


「何でしょう?」

「いや……良かったね」


 何がでしょう?


 いつもは外に行くか、コンビニ弁当の俺が弁当を食べているのに若干、注目されたが、特に追及されることもなく、昼休憩を終える。

 午後からも仕事をしていき、さすがに残業もせずに帰ることにした。

 そして、家に到着し、玄関の扉を開ける。


「ただいまー」

「あ、おかえりなさい」


 何故かジュリアさんがいた。


「あれ? どうしたの?」

「えーっと、家でアニメを見ていたんですけど、そうしたらノルン様にここに連れてこられました」


 はい?


「なんで?」

「ゲームです。2人でできるやつなんですけど、1人だとボスを倒せないからということで……」


 綺麗な方だけど、変な神様。


「サクヤ様はやらなかったんですか?」

「ジュリアが来る前に一度やらされたが、秒で死んだらコントローラーを没収されたのう」


 あー……サクヤ様はゲームをしないからな。

 2人協力プレイってことは多分、アクション系だろう。

 やったことがない人には無理だ。


「なんかごめんね」


 ジュリアさんになんとなく謝る。


「いえ、楽しかったですよ。1日でクリアしました」


 それはすごい。


「まあ、いつでも来ていいし、遊んでよ」

「ありがとうございます」

「あ、それとお弁当ありがとう。美味しかったよ」


 今朝、ジュリアさんがくれたのだ。


「いえ、昨日の生姜焼きの残りでしたから」


 そうは言うが、卵焼きとか色々入っていた。


「ジュリアさんって、いつも作ってるの?」

「そうですね。と言っても、普段は前日の残り物と休みの日に作った日が持つものを詰めています」


 ということは休みである今日は特別に作ってくれたってことだ。


「ジュリアさんはすごいね。大変じゃない?」

「そんなことないですよ。子供の頃からやってますし、慣れっこです。慣れると効率よくできるようになるんですよ」


 この子、仕事もできそうだな。


「ありがとうね。本当に美味しかったし、嬉しかったよ」

「良かったです」


 良い子だ。

 本当に良い子だ。


「晩飯はどうする?」


 サクヤ様が聞いてくる。


「ジュリアさん、希望とかある?」

「ルイナの町に行きませんか? ボアのバター焼きが食べたいです。なんか癖になるというか、また食べたいと思っちゃうんですよね」

「わかる、わかる」

「ハマるよね」


 サクヤ様と同意する様に頷く。


「じゃあ、そこに行こうか。着替えないと」

「あ、私もです。サクヤ様、お手数をかけますが、転移をお願いできますか」

「いいじゃろ」


 ジュリアさんがサクヤ様と共に家に戻ったので俺も服を着替える。

 そして、戻ってきた2人と共にルイナの町に行き、ボアのバター焼き定食を食べた。


 翌日、翌々日とそんな風に過ごしていき、出勤の3日を終える。

 金曜日になり、4連休が始まったのだが、ジュリアさんは親戚の集まりがあるので家には来なかった。

 なので、久しぶりにゲームをして過ごした。


 そして、翌日の土曜日。

 この日は朝から異世界の服に着替えたジュリアさんが来ていた。


「どうします?」

「うーん……」

「悩ましいところですね」


 俺達は異世界に行く準備はできているのだが、部屋で地図を広げて、考え込んでいる。

 異世界に行く前に今後のことを話し合おうということになったのだ。


「やっぱりカーティスさんおすすめの火の国か水の国じゃないです?」

「距離的にはそんなところかの?」


 火の国と水の国は隣国ということもあるが、フロック王国の王都から近いのだ。


「俺が行ってみたいのは火の国です。ジュリアさんは水の国らしいですね」

「まあ、どっちも行けばいいと思うな。となると、先にどっちにするかじゃな」

「そうなりますね。距離的には水の国の方が近いですよ」

「確かにな」


 サクヤ様も頷く。


「あのー、カーティスさんが水の国は夏がおすすめって言ってませんでした? 今は5月ですし、先に火の国に行って、次に水の国に行けばちょうどいい季節になりませんかね? 異世界の四季とこっちの四季が合っているのかはわかりませんけど……」


 ジュリアさんが旅行プランを言う。


「その辺はどうなんですか?」

「フロック王国周辺に関しては四季がほぼ一緒じゃな。確かマニュアルにそう書いてあった。ノルンはその辺も考慮してスタート地点を設定しておる」


 なんて優しい神様なんだろう。

 さすが美しさと気品を兼ね備えた女神様。


「じゃあ、先に火の国に行きますか」

「良いと思うぞ。ジュリアの言うことももっともだし」

「あ、あのー、自分で言っておいてなんですが、移動はどうするんですか? 馬車で10日って言ってましたけど、サクヤヒメ様の転移は行ったことがあるところにしか飛べないんですよね?」


 あー、それね。


「それに関しては裏技があるんじゃ。あとで教えてやろう」

「そうですか? 大丈夫なら問題ありません」


 まあ、たいした裏技でもないんだけどね。

 夜中にこっそり車で移動だし。


「となると、いつから行く?」


 サクヤ様が聞いてくる。


「とりあえず、冒険者ギルドや魔法ギルド、あとカーティスさんから情報を仕入れましょうよ。ほら、ノルン様が積極的な男性が多い国もあるって言ってたじゃないですか」

「言っておったのう……確かに先に調べておくか。変な風習があったら嫌じゃし」


 トラブルは避けたいから先にそういう情報を掴んでおくべきだ。


「じゃあ、まずはカーティスさんのところに行きましょう。本を返さないといけませんし」

「そうするかの。よし、行くか」


 俺達は方針を決めたので王都に行くことにし、転移した。

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