第031話 色々と聞けた


 俺とジュリアさんは本棚にある本を吟味しながら魔法を込めていく。

 すると、ノックの音が部屋に響いた。


『旦那様、お昼をお持ちました』

「うむ」


 カーティスさんが返事をし、頷くと、扉が開き、4人の籠を持ったメイドさんが入ってくる。

 そして、テーブルに4人分のサンドイッチとスープを並べていった。


「そろそろ昼にせんかね?」

「俺達のもですか?」

「うむ。せっかくだし、食べたまえ。ウチのシェフに作らせたものだ」


 さすがは貴族様。


「もらおうか」

「そうですね」


 俺とジュリアさんはテーブルに行き、席についた。

 そして、サクヤ様と共にサンドイッチを食べる。

 何かの肉のサンドイッチだと思うが、肉汁とパンがものすごく合う。


「サンドイッチまでここまで美味いんですね」

「ホントじゃの」

「すごく美味しいです」


 この世界の人って毎食こういうのを食べているんだよな。

 すごいわ。


「たいしたものではないが、満足してくれたのなら良かった。ウチのシェフも喜ぶだろう」

「カーティスさん、実はこういう食だったり、観光のために世界を回っているのですが、おすすめとかありませんか?」


 貴族なら詳しいかもしれない。


「ここからなら北にある火の国、東にある水の国だな」

「火の国って火がすごいんですか?」


 危なくない?


「火山があるんだよ。温泉なんかが人気だし、食も辛いものが多いが、人気だな」


 辛いのは好きだな。

 中華とかよく食べるし。


「噴火しません?」

「するな……とはいえ、大丈夫だと思うぞ。ちゃんと管理しているみたいだし、予測なんかもしているらしい」


 へー……


「ここからどのくらい離れてます?」

「馬車で10日かな?」

「遠いですね」

「まあ、隣国とはいえ、他国だからな。とはいえ、道は整備されているから道中は楽だと思う」


 車で行けるかな?


「水の国っていうのは?」

「こっちは海沿いにある大きな湖がある国だ。ほら、水っぽいだろ」


 確かに。


「観光地っぽいですね」

「そうだな。おすすめは夏だ。海も湖も泳げるし、当然、海産物も多い。そういうリゾート地になっている。ウチでも数年前に行ったな。こっちは馬車で5日程度だ」

「そっちは近いんですね」

「水の国は小さな国なんだ。ここで出されている海産物はそこから輸入した冷凍品になる」


 なるほど。

 だから海もないのに海産物もあるんだ。


「参考になります」

「昔は外交官を務めていたことあるし、他国のことなら何でも聞くが良い」


 この人、めっちゃお偉いさんじゃない?

 外交官って絶対にエリートだろ。


「ありがとうございます」


 俺達は食事を終えると、魔石に魔法を込める作業を再開する。

 そして、夕方になったあたりですべての魔石に魔法を込め終えた。


「カーティスさん、終わりましたよ」

「うむ。感謝する。陛下も喜ぶだろう。これは依頼料だ」


 カーティスさんがテーブルに金貨を置く。

 数を数えてみると、20枚もあった。


「こんなにですか?」

「それくらいの価値があるということだな。もしかしたらまた頼むかもしれん。その時は魔法ギルドを通して連絡するから時間がある時にでも寄ってくれ」

「他国にいても連絡できるんです?」

「ギルドは情報共有しているし、そういう魔道具もあるんだ」


 電話とかメールかな?


「わかりました。あ、また本を借りてもいいです? ジュリアさんも借りたいみたいです」

「構わんぞ」

「ありがとうございます」


 礼を言うと、ジュリアさんと一緒に頭を下げる。


「よし、飯食って帰るかの」


 サクヤ様が立ち上がった。


「そうですね。カーティスさん、これで失礼します」

「うむ」


 俺達はカーティスさんの研究室を出ると、魔法ギルドに戻る。

 そして、中に入ると、そこまでの人はいなかったのでチェスターさんのところに向かった。


「お、戻ってきたね。終わったかい?」


 チェスターさんが陽気に声をかけてくる。


「ええ。それにしても人が少ないですね」

「そうかい?」

「先週、冒険者ギルドで仕事をしたんですけど、同じような時間帯は人が多かったです」


 ここは俺達以外に数人しかいない。


「ああ、そういうこと……冒険者ギルドとウチとでは絶対数が違うよ。向こうは誰でもなれる冒険者だけど、ウチは魔法使いしか所属できないからね。割合的には9対1ってところ。我々は選ばれた人間なんだよ」

「魔法使いってそんな感じです?」


 特権階級的な?


「あれ? 冗談だったんだけど、面白くない? 魔導帝国ジョーク」


 何それ?

 流行ってんのかな?


「魔導帝国って何です?」

「あー……そういえばそうだったね……魔導帝国っていうのはここから南にある国さ。規模的にはそこまで大きくないんだけど、魔法が発展している国って認識でいいよ。実は正式名称が別にあるんだけど、皆、魔導帝国って呼んでいる。魔法使いじゃない人はおすすめしないけど、魔法使いなら一回は行ってみてもいいんじゃないかな?」


 魔法使いじゃない人はおすすめしない……


「魔法使いが優遇される国です?」

「そうそう。逆に魔法使いじゃない人の扱いがちょっとね……選民思想であまり好ましく思う人はいないけど、世界中の魔導書が集まる図書館とかあるし、すごく勉強になるんだよ」


 差別がすごそうだな……

 幸い、ウチは大丈夫だろうけど……


「考えておきます」

「まあ、ちょっと遠いしね。あ、これがジュリアさんのギルドカードだよ」


 チェスターさんがカウンターに真っ赤なカードを置いた。


「ありがとうございます」


 ジュリアさんはカードを手に取ると、じーっと見る。


「真っ赤ですね」

「俺はレッドカードで退場って思った」

「何ですか、それ?」


 サッカーを知らないのか。


「サッカーでそういうルールがあるんだよ」

「そうなんですね。バレーくらいしかしたことないです」


 そういや、体育の時も俺達がサッカーしていた時に女子は体育館でバレーをしてたな。


「大事にしてね。再発行は本当に面倒だから」


 チェスターさんが苦笑いを浮かべながら忠告してきた。


「わかりました」

「よし、飯に行くぞ。腹減ったわい」


 確かに俺も空いてきた。


「チェスターさん、俺達は帰りますね」

「うん。またお願いねー」


 俺達はギルドを出ると、繁華街に行き、適当な店で夕食を食べる。

 そして、転移で家に帰った。

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