第028話 GWの予定


 家に帰った後、金曜のジュリアさんとのデートから始まり、楽しかった土日を終えたので翌日からの仕事を考えて、ちょっと嫌な気持ちになったものの、来週からはゴールデンウィークだと言い聞かせ、就寝した。


 月曜から仕事が始まり、いつもの日常が再開する。

 ただ、変わったことがいくつかある。

 まず、ジュリアさんとの連絡頻度が格段に増えたこと。

 これまではそれはそれでどうなんだと思うが、食事なんかを誘うくらいの時しか連絡を取っていなかったが、昼休みなんかに他愛のないメールのやり取りをするようになった。

 さらには毎日というわけではないが、異世界に夕食を食べに行ったり、夜にウチにやってきてゲームをすることもあるため、会う機会も格段に増えた。


 そんなこんなで自分の日常が変わりつつあるなーと思いながら1週間を過ごしていると、金曜日になった。

 この日もサクヤ様とジュリアさんと異世界に行き、一緒に夕食を食べた。

 そして、ジュリアさんは一度、家に帰ったのだが、夜の9時を過ぎた辺りでサクヤ様の転移で戻ってくる。

 ただ、何故かノートパソコンを持っていた。


「どうしたの、それ?」

「あ、サクヤヒメ様がアニメを見たいと……」


 女児アニメか……


「サブスクで見放題らしいぞ。昔のを見るんじゃ」


 まさかこの前のジュリアさん家で話していたのはそれじゃないよな?


「ジュリアさん、すみません」

「いえ。見放題ですし、大丈夫ですよ。ゲームしてもいいです?」

「どうぞ」

「ありがとうございます」


 ジュリアさんは笑顔で礼を言い、パソコンをセットする。

 そして、サクヤ様がパソコンにかぶりつき始めると、ゲームを始めた。

 俺はそれを時折り、眺めながら魔石を取り出す練習をする。

 チラッとテレビを見たのだが、勇者ジュリアももうレベルが15もある。


「ジュリアさん、ゴールデンウィークって10連休だよね? 予定とか決まってるの?」

「えーっと、今度の月曜に組合ですね。健診結果の面談があります」


 あ、そういえば、俺もそれがあった。

 ポストに入ってたわ。


「俺もだわ。いつにしようかな……」

「一緒に行きませんか? もちろん、月曜日が空いていればですけど……」


 予定はないな……

 まあ、基本的にないんだけど。


「そうしよっか。何時にした?」

「午前中に行こうかと思っています」


 午前中が楽でいいか。


「じゃあ、俺もそうする。迎えに行くよ」

「いいんです?」

「うん。通り道だしね」


 方向的には俺の家、ジュリアさんの家、組合なのだ。


「ありがとうございます」


 ジュリアさんがにっこりと微笑んだ。


「他に予定は?」

「来週になりますが、金曜は実家に戻ります。親戚の集まりがあるようです」


 あー、浅井さんの家は大きいからな。

 となると、俺が休みでかつ、ジュリアさんが空いているのは明日明後日と次の土曜から月曜か。


「明日、異世界に行こうかなーと思っているけど、行く?」

「行きます」


 即答か……


「じゃあ、行こうか」

「はい。ありがとうございます」

「それとさ、明後日の日曜だけど、どこかに出かけない?」


 デート。


「はい……ご一緒したいです」

「それでさ、どこかに行きたいところとかある?」


 色々と考えたが、聞くことにした。

 というのも俺達は移動が制限されているため、遠くには行けない。

 そうなると、地元が中心となるが、多分、遠足や友達とほとんど行ってると思う。


「行きたいところですか……」

「もちろん、買い物とかでもいいよ」

「そうですね……隣町にある植物園がいいです」


 植物園……

 なんか小学校の時に遠足で行ったような記憶があるような……


「植物が好きなの?」

「好きは好きですね。ただ、小学校の時に遠足で行けなかったところです」


 ジュリアさんの代でも植物園の遠足はあったのか……

 被ってはないが、俺とジュリアさんは小学校と中学校が同じなのだ。


「組合の制限じゃないよね?」


 さすがに隣町は行けるはずだ。


「あ、違います。風邪を引いちゃったんですよ。ショックでした」


 今でも覚えているくらいにはショックだったんだな。

 修学旅行のシンガポールと一緒。


「じゃあ、そこに行こうよ。ウツボカズラがいたのは覚えてる」


 ラフレシアもだったが、某ゲームのモンスターっぽかった。


「それです。翌日、皆がそういう話をしていました」


 ジュリアさんってそういう疎外感が嫌なんだろうな。


「俺もずっと行ってないし、行こうよ」

「はい。では、私が運転しますよ」

「するの?」

「ええ。隣町ですし、いつも乗せてもらってますからたまには私が出します」


 大丈夫かなって思ったが、よく考えたら毎日乗ってるか。


「じゃあ、お願いするよ」

「任せておいてください」


 ジュリアさんは嬉しそうだ。


「サクヤ様も行きます?」

「行くわけないじゃろ」


 でしょうね。

 サクヤ様がデートしろって言ったわけだし。


「聞いてみただけです」

「そうかい。ジュリア、その日もこのパソコンを貸してくれ」

「わかりました。持ってきます」


 多分、ウチのサクヤ様は女児アニメを見て、ノルン様はゲームしているんだろうな。

 俺の部屋が神様の娯楽スポットになってしまった。


「ちなみにだけど、勇者のるんはどうなってた?」

「レベル99でしたよ。違うソフトが刺さってましたし、クリアしたんだと思います」


 やっぱりか。

 魔王を完ステでボコったんだろう。

 もし、あっちの世界に魔王が現れても自分で行きそうだな……





――――――――――――


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本作品も含め、今後ともよろしくお願い致します。

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