第020話 勇者ジュリアがなかまにくわわった
ジュリアさんを助手席に乗せ、送り届けている車内で軽く説明する。
誕生日プレゼントとしてサクヤ様に異世界に連れていってもらったこと、ノルン様が色々サポートしてくれること、そして、異世界のことなんかも含めて、経緯を話していった。
「異世界ですか……魔法使いというファンタジーな世界の人間ではあるのですが、驚きですね」
まあね。
「楽しいよ?」
「前に会った時からハルトさんが楽しそうだなとは思っていました。どこか嬉しそうでしたし、良いことがあったのかなと思っていましたが、そういうことでしたか……」
そういやそんなことも言われたな。
「前はそうでもなかったけど、今は休日が待ち遠しいよ」
平日もカーティスさんの本が面白い。
「そうですか。話を聞くと、すごく興味がありますね。それに先程の光景はキラキラしてすごかったです」
「確かにね……」
話をしていると、ジュリアさんのアパートの前に到着した。
「ハルトさん、今日はありがとうございました。映画もでしたが、夕食もご一緒できましたし、家にまで招いていただいて嬉しかったです。それに異世界のことも……」
色々あったな……
「急でごめんね」
趣味が一緒だったことで急速に関係が進んでしまった。
いや、良いことなんだが、さすがに一日で色々と話しすぎてしまったのだ。
「いえ……お話しいただき、嬉しかったです。明日はどうしましょうか?」
「10時くらいに迎えにいくよ。大丈夫?」
「はい。楽しみにしています。では、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
ジュリアさんは車から降り、アパートに向かう。
そして、アパートに入る前に振り向き、手を振ってくれたので俺も振り返し、家に戻った。
車を止め、部屋に戻る。
すると、サクヤ様はまだ起きており、ロイヤルなミルクティーを飲みながらテーブルに肘をついていた。
「サクヤ様、急にジュリアさんを呼んでしまい、申し訳ございません」
席につくと、サクヤ様に謝罪する。
「よい。むしろ、よくやったと思う。ちょっと急すぎてびっくりしただけじゃ」
「実は言われた通りにアニメを見たんですけど、ジュリアさんも好きだったみたいです」
「そのようじゃの。話を聞いておると、外への憧れが強いんじゃろう」
多分、そうだろう。
俺も同じ気持ちだし。
「ええ。ファミレスで話をしたんですけど、ゲームの話になって、それでウチに連れてきたんです」
「うむ。共通の趣味があるのは良いことじゃないか。おぬしらも普通にしゃべれておった気がする」
「そうですね。一緒にアニメを見て、そういう話をしていると、普通に話せるようになりました。どうも俺は向こうをお嬢様と決めつけすぎていた気がします」
実際はファミレスも利用するし、会社に勤めている普通の人だった。
「うんうん。お互いを知り、進むことじゃな。一時はどうなることかと思ったが、良さそうな娘が嫁に来てくれそうで良かったわい」
「あの、今さらですが、ジュリアさんを異世界に連れていってもよろしいのでしょうか?」
「うんうん、今さらじゃな。さっきノルンには話をしておいた。こっそりと例の言語が通じるやつとワクチンを仕込んでおくそうじゃ」
ノルン様、優しい。
「ありがとうございます」
「うむ。それで明日はどうするんじゃ?」
「10時に迎えにいってきます。車が1台しか止められないので」
「そうか、そうか。では、そうしようかの」
サクヤ様はご機嫌だ。
「サクヤ様はもう風呂に入られましたか?」
「入ったぞ。おぬしも入れ」
「わかりました」
頷くと風呂に入る。
そして、風呂から上がると、早めに就寝した。
翌日、朝早くに起きた俺は部屋の片づけをする。
「昨日するべきじゃったの」
「ですね……まさか家に呼ぶことになるとは思ってもいなかったもので」
自然と誘ってしまった。
「ホントにの。それで今日はどうするんじゃ?」
「冒険者ギルドに行こうと思っていたんですけど、どうしましょう?」
「そうじゃのう……それは昼からで良いじゃろう。午前中にジュリアに異世界を見せてやれ。王都でもいいし、転移を使ってルイナの町に行っても構わん」
「ありがとうございます。そうしたいと思います」
ジュリアさんも喜ぶだろう
その後も片づけをし、ある程度綺麗になると、いい時間になったので家を出た。
車を走らせ、ジュリアさんのアパートに向かう。
そして、アパートの前に到着すると、電話をかけ、下で待っていることを告げた。
すると、すぐにジュリアさんがやってきて、助手席に乗り込んでくる。
「お待たせしました」
「昨日は眠れた?」
俺はちょっと色々と思い出したりして、寝つきが悪かった。
「ええ。ちょっと興奮していましたが、ゆっくり寝られました」
「なら良かった。じゃあ、行くね」
「はい」
車を発進させ、家に戻る。
そして、駐車場に車を止めると、ジュリアさんと共に部屋に入った。
すると、すでにサクヤ様が異世界の服に着替えて待っていた。
「ただいま戻りました」
「おかえり」
サクヤ様が頷くと、ジュリアさんがまたもやサクヤ様の前で膝をつき、深々と頭を下げる。
「サクヤヒメ様、おはようございます。2日連続でお邪魔しております」
「う、うむ。ジュリアよ、そこまでへりくだらんでいいぞ」
俺もそう思う。
「しかし……」
「面倒だからやめい。それに今から異世界に行くが、見た目少女の我にそこまでされると目立つじゃろ。お忍び旅だと思って普通にしとけ」
「かしこまりました」
ジュリアさんが再び、頭を下げる。
「わかっておるのか……? しかし、おぬしの格好は目立つな」
ジュリアさんはニットにロングスカートだ。
とても似合っているし、可愛いと思うが、異世界では目立つだろう。
「サクヤ様、どうしましょう? ノルン様に頼めませんか?」
「そうじゃな……ジュリアよ、どういう服がいい?」
「どういうと言われましても……」
昨日は暗かったし、ちょっとしかいなかったからわからないわな。
「午前中はこれで回りましょうか。それでジュリアさんに方向性を決めてもらって、ノルン様に相談しましょう」
「それがいいの。よし、おぬしは着替えてこい」
「あ、そうですね」
俺は用意してあった服を取り、脱衣所に行って着替えることにした。
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