第017話 進んだ?


 ファミレスに到着すると、同じタイミングでジュリアさんの車もやってきたので車を降り、ファミレスに入る。


「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞー」


 店員に勧められたので窓際の席に向かう。

 店内は若い子から爺さん婆さんまで様々な年代の人がおり、皆、楽しそうに話をしていた。


「さすがにお腹空いたよ」


 向かい合って座ると、2人でメニューを見る。


「そうですね。映画を見ている時は何も感じませんでしたが、終わった瞬間にお腹が空いていることに気が付きました」


 俺もそう。

 ちょっとお腹が鳴ったし。


「何食べる? 俺、チキン南蛮定食にする」

「私は煮魚定食にします」

「和風だね」

「まあ、和風の家なんで……」


 確かにそうだな。


 俺は備え付けられているタブレットでドリンクバーと共に定食を2つ注文した。

 そして、ドリンクを入れ、ちょっとすると、定食が来たので食べだす。


「美味いわ」

「ですね。料理をするのが億劫な時にたまに利用しますよ」


 そうなんだ……


「あまりイメージにないね」

「ですかね? でも、家族と食事をする時にはファミレスに来たことはなかったです。友達とだけですね」


 学生はファミレスを使うだろうな。

 安いし。

 実際、俺もそうだったし、何なら今でもサクヤ様と来たりする。


「1人暮らしだっけ? 家から出たんだね」


 最初に会った時は当時大学生だったから実家暮らしだった。


「あまり大きな声では言えませんが、実家がちょっと厳しいんですよ。家では洋食がほぼ出ないんですよ? 和食は好きですし、今でも自炊の中心は和食ですけど、たまにはパスタとかラーメンを食べたいじゃないですか」


 悪いが、ジュリアさんがラーメンを食べている姿は想像できんな。


「樹莉愛なのにね」

「ええ。樹莉愛なのにです」


 ジュリアさんが笑った。


 うーん、なんでだろう?

 今日は普通に話せる。

 映画のおかげだろうか?


「そういえば、ジュリアさんってアニメが好きなの?」

「ええ。好きですね。高校2年生の時に初めて見たんですけど、それからずっと好きです。それから漫画を読んだり、ソシャゲをしていますね。社会人なんでガチャも回せます」


 へー……

 お見合いをして、半年になるが、初めて知ったわ。

 最初に趣味は何ですかって聞いた時に絵画鑑賞って言ってなかったか?


「そうなんだ」

「ハルトさんもお好きなんですか?」

「そうだね。俺は子供のころから好き。まあ、小学生男子は皆好きでしょ。それが今まで続いている感じ」

「確かに男子はそうでしたね。私はそれを見て、子供っぽいなーって思ってました。でも、私は23歳になってもアニメや漫画を見てますし、何ならソシャゲに課金してます」


 まあ、社会人だから……


「俺もゲームは好きだね。ソシャゲはやらないけど、家庭ゲーム。今、昔のゲーム機を引っ張り出してやってる」


 ノルン様もやってる。


「へー……良いですね。ウチは厳しかったんでそういうゲーム機がなかったです。兄が愚痴ってましたね」


 ジュリアさんには兄がいる。

 浅井家の次期当主であり、今は県議の秘書をしているらしい。


「昔のゲームだけど、楽しいよ」

「良いですね」


 俺達はその後も話をしながら食事をし、食べ終えた後もドリンクバーで飲み物を飲みながら話を続けていく。


「今日見たやつって漫画が原作なんだっけ?」

「そうですね。今日のやつは第1章です。今は3章までやってて、10巻まで出ていますね」

「へー……買おうかな」


 ノルン様も好きそうだし。


「貸しましょうか?」

「いいの?」

「ええ。せっかくなので読んでもらいたいですし、2章が面白いんですよ」


 そうなんだ……


「正直に言うけど、ジュリアさんがそういうのが好きなのは意外だったよ」


 絵画鑑賞は?

 もしかしてなくても漫画のことを絵画って言ってる?

 広義では間違ってはいないような気もするけど……


「それは私もですね」

「そうなの?」

「はい。だって、ハルトさんは岩見家の当主様であり、高名な魔法使いですから…」


 30歳安月給に何を言っているんだろう?

 でも、村田さんが言っていた向こうも同じようなことを思っているという言葉の意味がちょっとわかった。


「あー、うん……当主だね……微妙だけど」

「そんなことないですよ。この辺りでは知らない者がいないとまで言われた岩見家の当主じゃないですか」


 100年以上前の話をされても……

 というか、あなたの家もだし、何なら現在進行形でそうだろ。


「そだね……ごめん。そういう立場にあるから実はアニメとかが好きって言いにくかったんだよ」


 一番は年齢だけど。


「それは……わかります。私もそうですから」

「ジュリアさんも?」

「家が厳しいですし……」


 そうなっちゃうのか……


「ソシャゲをやるんだっけ? 家庭用ゲームはしないの?」

「やりたいとは思ってますね」

「やってみる? 貸そうか?」


 漫画を貸してくれるらしいし。


「いいんですか?」


 あ、ダメだ。

 ノルン様がプレイ中だった。


「あー、ごめん。ちょっと諸事情で貸せなかったわ。ウチでやる?」

「ウチ……」


 あ、ちょっとマズかったかも。

 共通の趣味が見つかって調子に乗ってしまった。


「あ、いや、他意はないよ?」

「他意? あ、あの、やってみたいという気持ちはあるのですが、迷惑ではないでしょうか?」


 ん?


「迷惑って?」


 俺が誘っているんだけど?


「その……サクヤヒメ様がおられますし……」


 サクヤ様が気になるわけか。


「あの人は気にしなくていいよ。基本、寝てるかあやとりしてるから」

「そ、そうですか?」

「うん」

「では、お邪魔させていただきたいです。興味はあったんですけど、どれを買えばいいのかわからなかったので」


 ゲーム機も増えたしね。

 そういう意味では誰も持っているスマホでソシャゲをしているのも納得できる。


「今からちょっとだけでもやってみる?」

「今からですか? 急ですけど、大丈夫でしょうか?」

「うん。明日明後日はちょっと用事があるんだよ」


 異世界に行く。


「では……あー、車をどうしましょう?」


 これだよ。

 やっぱり迎えに行くべきだった。


「ウチは1台しか止められないわ。ここに止めておくのはマズいよね?」


 怒られそうだ。


「多分……でしたら一度ウチに来てもらえませんか? 漫画をお貸ししたいですし、そのついでに車を置きます」

「悪いね。じゃあ、そうしよっか。あ、それとだけどさ、誘ったのは俺だけど、こんな時間にウチに来ても大丈夫?」

「え? まあ、明日も休みですし、多少遅くなっても問題ありません。実家にいた頃は門限とかありましたけど、今は自由ですしね」


 そういう意味じゃないんだが……

 まあ、サクヤ様がいるからかな……


「じゃあ、行こうか」

「はい。先行しますのでついてきてください」


 俺達はレジに行き、会計を済ませると、ファミレスを出た。

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