第015話 神様 ★


 その後、ノルン様はダンジョンを探索し終えると、町に戻ってセーブをする。

 そして、紙を置いていき、コーラを持って消えてしまった。


 ノルン様が残してくれた紙を見ると、世界地図だった。

 ありがとうございますと心の中で祈りと感謝を捧げると、読書を再開し、夕方になったのでサクヤ様を起こして夕食を食べにいった。

 そして、家に帰ると、サクヤ様とノルン様にもらった世界地図を見る。


「広いし、色んな国がありますね」

「そうじゃの。別の大陸もあるんじゃな」


 俺達がいるフロック王国がある大陸が一番大きいが、他にも大陸はあるし、島国もある。


「船ですかね?」

「じゃないか? まあ、この辺りは先の話じゃな。まずは大陸を回ってみよう」

「確かにそうですね」


 俺達はその後も地図を見ながら話をし、この日は就寝した。


 翌日は月曜日のため、仕事だ。

 俺は別にやりたい仕事があるわけではないので東京にいた時とは違う職種の会社に入った。

 正直、興味ある職種ではないし、仕事を楽しいと思ったことはない。

 それでも働かなければ生きていけないので頑張って働いていく。


 家に帰れば、サクヤ様と異世界で夕食を堪能し、カーティスさんからもらった本を読んだり、ゲームをして楽しんだ。

 そして、金曜日になり、今週最後の仕事を終えると、一度家に戻る。


「サクヤ様、夕食は作っておくので食べてください」

「よい。異世界で食べる」

「1人で大丈夫です?」


 王都を歩いている限り、治安は良さそうだったが、見た目少女のサクヤ様が1人で歩いていて大丈夫だろうか?


「我は神ぞ? 問題ないわ」


 まあ、最悪は転移で逃げられるか。


「お気をつけて」

「我よりおぬしじゃ。わかっておるな? 今日がラストチャンスと思え」


 え?


「ラストチャンスですか?」


 自分のペースでいいって言ったくせに。


「そうでも思わんと進まんわ。別に子供をこしらえてこいとは言っておらん。関係性を進めよと言っておるんだ。それが良い方向なのか悪い方向なのかはわからんが、今日、進まんかったら今後も進まん。実際、ここまでグダグダと来ておるからな。今日、何の進展もなかったら浅井に断りの連絡を入れよ。今日無理ならずっと無理じゃ」

「わ、わかりました……頑張ります」

「行ってこい。慰め会はしてやる」


 おーい……


「行ってきます」


 家を出ると、車に乗り込み、待ち合わせ場所であるショッピングモールに向かった。




 ◆◇◆




「ハァ……」


 ハルトが家を出ていくと、思わずため息が出る。


「ハルトさんはデートですか?」


 声がしたので振り向くと、ノルンがゲームのスイッチを入れていた。


「またゲームか?」

「ええ。面白いんでね……」


 ノルンがピコピコとゲームをやりだす。


「そうか……ハルトはデートじゃな。見合い相手じゃ」

「へー……それは良いことですね。家の当主が30歳になっても跡継ぎどころか奥さんすらいないのはウチの世界の王侯貴族では考えられませんよ」


 それはウチの世界でもじゃよ……


「奥手な子なんじゃ」

「それでも限度があるでしょ」

「まあの……だから今回の見合いは助かる。ぜーんぜん、進まんがな」


 ハルトが見合いを受けると言ったから任せておったが、ここまで長引くとは思わなかった。

 人見知りする子でもないし、老若男女問わず、普通に話ができる子だ。

 だが、まさか恋愛ごとになると、ここまで奥手になるとは想像ができなかった。

 まあ、よく考えたら学生時代もゲームや魔法ばかりで浮いた話が1つもなかったが……


「好みじゃないんじゃないです? もしくは、将来が見えないとか」

「いや、好みだ。見合い前に写真を見て、すげーって言っておったし……将来が見えないというのはあるな……この6畳の部屋が80代も続いた名家中の名家である岩見家の家じゃ」


 厳密に言うと、借家。


「再興を目指しているわけですか。まあ、あれほどの魔法使いならできそうです」


 どうかな……

 確かにハルトは天才だが、時代が悪すぎた。


「上手くいったらせめてもう少し広い部屋には引っ越したいのう」

「この部屋に4人はきついですよ」


 何を自分を頭数に入れておるんじゃ……

 ゲームする気満々。


「せめて2DKか1LDKは欲しいのう」


 遺産や保険金も少なからずある。

 ハルトはまったく手を付ける気がないようじゃが……


「いっそウチで豪邸でも建てたらどうです? それでたくさんの奥さんをもらって子孫を作るんです。ハルトさんの血なら優秀な子がいっぱい生まれますよ」

「悪いが、我が国は一夫一妻じゃ」


 昔はそうでもなかったが現代ではそう。


「ウチは関係ありませんよ? ウチの宗教は甲斐性さえあれば好きなだけ囲ってもいいです」

「あの子には無理じゃ」


 1人でもあれだし……


「悠長な……あなた、わかってます? 家に根付いた神は家の断絶と共に消滅ですよ?」


 もちろん、わかっておる。

 そうやってお家と共に消滅した神も知っている。


「我はイワミノサクヤヒメじゃ。岩見の死が我の死。じゃが、基本的には子に任せる。それが神じゃ。人に干渉するものではない」


 十分、干渉しておるが、限度というものがある。


「ふーん……上手くいくと良いですね」

「最高は今日、帰ってこないことじゃな」


 もっとも、待ち合わせ場所をショッピングモールにした時点で期待薄じゃがな。

 普通、相手の家に迎えに行って、一緒に行くじゃろ。

 そうしたら帰りにちょっと寄っていってお茶を……みたいな展開になって、大人の男女の時間になるというのに……

 このままだと、お互いに車だから現地解散でさようなら、じゃ。


「嫌な神様……むっつりじゃないですか」

「心を読むんじゃない」


 ハーレム推奨神のくせに。

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