第13話 領主と交渉と襲撃者
『ネーセル様は疲労で意識を失っただけのようです。安静にしていれば回復するはずです』
「分かりました、ありがとうございます!」
副隊長はネーセルさんの肩を担いで、自分の席に戻っていった。
「それにしても気絶しちゃうなんて、よっぽど疲れてたのかな」
『隊長職ですからね、あの手記も書いていたみたいですし、大変なんでしょう。部下からは慕われているようです』
「いい副隊長さんだね...、ネーセルさんが想いにきづくといいね」
『はい、船長...』
副隊長さんは顔を真赤にしながら隊長を担いでいた。同僚が囃し立てている。
と、先頭の座席からそれを覗くコフィの姿があった。
「コフィ、結局ネーセルさんと合わなかったけどいいの?」
私が代理ということで全部接待とかしたのだ。
「だって...怖そうだし」
「分からなくもないけど、いい人だよ」
コフィは首をふる。
「人とはなすの苦手、あんま好きじゃない」
まあ、なんとなく想像はつく。
「そう、まあ部下の私がしないとね」
「うん。でもリセは上司をもっと頼るべき」
いやその上司あなたですからね!。だったら代わりにやってくださいよ。
「いや頼るって...」
垂直離着陸輸送機は高度3000mをマッハ0.8で飛行していた。全長80m、翼幅60m、最大離陸重量1000トン、エンジンは電気モーター式のプロペラエンジン4つで、ティルトウイング式である。
大気がある惑星で使われる民生輸送機だ。正式名称はV‐54である。21世紀の人の為に言うならば、翼ごと動く4発オスプレイの超大型版である。エネルギーとなる電気はローディー・デイス号から直接マイクロ波を送信している。
電気モーター式だからか音が殆どしない。
輸送機が向かうはネーセルさんたちの
『間もなくソイルに着きます。あれが領主の屋敷です』
レイはスクリーンにリアルタイム画像を表示する。
「あそこに着地できる?」
『はい、問題ないです』
V‐54は主翼の角度を変え、ホバリングしつつ降下していった。
☆☆☆
(side 領主)
眠りの奥底から、悲鳴によって意識は無理やり現実へ引き戻された。
「.........〜ゅさま、領主様!?起きてください、外に巨大ななにかが!」
「ね、眠い...。ん、なんだ?」
「いいから早く!」
そう言ってメイドは領主を庭へ引っ張った。住み込みの部下やメイド達が庭に出て何やら空を見上げている。
「なんだ、あれは!?」
空にはとてつもない音をたてながら大きい何かが浮いていた。くるくると何か回るものがついている。
「なんでしょうか!?」
「大っきい〜!」
「でっけえ!」
「敵襲か!?」
それは唖然とする領主の前で徐々に高度を落とし、庭に着地した(ニワクソヒレエナオイ!)。
そして、パカリと葉巻状の部分の四角いものが開き、スロープのようになった。
そこから現れたのは、よく知っている人だった。
「ネーセルか!?どうしたんだ、一体!?これは何なんだ?」
そう、出てきたのはつい数日前に調査の為に送り出した辺境騎士隊隊長、ネーセルだった。
「領主様、落ち着いてください!。順を追って説明しますから!」
ネーセルの後ろからは調査隊の面子がぞろぞろと出てくる。地竜も鳴き声をあげながら竜車を引いて出てくる。
「あ、あ、へ...?」
思わず変な声が出る。
「「「えええ!?」」」
決めてはその大きなそれから不気味な音をたてて歩いてくる人の形をした、金属に覆われた何かだった。
鉄人と呼ぶのがふさわしい見た目のそれは無機質な歪な形の頭部をくるりと360°回転させた。
『船長、あの方です』
「ああ....。始めまして、領主様。私はリセと申します。貴国と話し合いたいことや交渉したいことがありますので、参りました」
その鉄人が守るように囲んでいたのは、2人の銀髪と赤毛の少女だった。
☆☆☆
in領主の屋敷。
「つまり、君たちは空から来た天人で、我々と交易を望んでいると?」
領主さんにはネーセルさんが分かりやすく説明して、機械やら食べ物やら見せたり食べさせたりした。なんとか納得してくれたようだ。
「はい、交易を望んでいるというよりは交易の対価として調査がしたいのですが、だいたい合ってます」
「ふーむ、。やはや、凄いものばかりだな、このバピコという氷菓子はとても美味だった...凍ったままの物を保存するなど、このあたりでは聞いたことが無い技術だな。これが入手できるのか?」
パ〇コおいしいよね。チョココーヒーしか勝たん!
「基本的には我々の調査に協力して下さる分だけ、我々が生産したものを一定数を王国に納めます」
「なるほど。調査とは?」
「魔法や魔獣系のテストや検査を行います。例えば魔法使用時の人間を観測したりします。また、この世界の歴史についても書物などを精査させてもらいます」
正直魔法系は作動原理が一切不明であり、早急に調べたいものの一つだ。あと歴史は、この星に人間が居ることの理由が何か分かるかもしれない。
「そんなものでいいのか?」
「はい、元々我々の世界には魔法というものが存在しませんでしたから。それだけでもとても貴重なことです」
「...これは乗らない手はないな。下手したら我が国もリークリアよりも発展できるかもしれん」
「では...」
「ああ、さっそく王都に伝令を出そう、国王もお喜びになるだろう。ここには魔信器はないのでな、時間がかかってしまうが、伝令となることを許してくれ。ただ、その、ユソウキやらでは王都には向かわないでくれ。王都は防空警戒が厳重だ、下手に向かうと敵と間違われて撃墜されてしまうかもしれない」
ペルラシオ王国には
いやいやヤバいでしょ!。対空魔法ってなんだよ!文明レベル中世なのに戦略とか戦術とか魔法やワイバーンあるだけで現代レベルになってるんだけど!?。
「分かりました。我々も地上の足を用意しておきましょう」
「それはソウコウシャというものか?」
「はい、ユソウキで運んでおきましょう」
「地竜よりも速いのだと...楽しみにしておるぞ」
交渉もひと段落し、私たちは領主さんが魔物料理パーティーを開いたので、魔物料理を食べていた。コフィもおいしい匂いにつられて、私の後ろに隠れながらも出席していた。
「リセさん、そちらの嬢ちゃんは?」
「私の上司です。ほら、コフィ、あいさつしな」
コフィはしぶしぶ顔を出す。
「...カエラ・コフィです。会長です」
「会長?...リセさんの上司って本当なのか!?」
と領主さん。
「こんなに小っちゃい子が!?可愛い!」
と、ネーセルさん。
コフィはぶるぶるすると、また私にしがみつきながら、後ろに隠れた。
「人見知りなんで、仲良くしてやってください」
「わあ!、そこのかわいい子ちゃん、お姉さん達と一緒に食べない?」
「フルフル」
「甘ーいお菓子もあるよ!」
「いく」
コフィは結局、騎士隊の女性騎士や女性兵士たちに連れてかれて、可愛がられながらお菓子をほおばっていた。
『船長、このオオトカゲ、脊椎動物の系譜から外れているようですよ』
レイはこの惑星に生息するトカゲの丸焼きをさながら解体ショーのように分解して調べていた。
『…こっちには未知の器官がありますね...』
「いや食べろよ、食べ物で解体ショーすな」
『すみません、いつもの癖で...』
今は蛋白機械のデータはクインと同期しているが、元は中古品で、私が買う前は確か異星の生物を調べる生物学者の助手をしていたらしい。記憶は消さないでいるから、そこがクインと
その時、一人の兵士が慌てて会場に入って来た。
「領主様!リークリアです!奴ら遂に侵攻してきました!守衛所の幾つかがやられた模様です!」
程なくして魔導拡声器で降伏を促すリークリア兵の声が聞こえてきた。
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