第11話 驚愕で気絶しそうなネーセルさん

ワゴンに乗っているのは宝石や剣、食器、そして保存食の類だ。


「そちらの方は?」


『どうも、ネーセル様。私はレイ・クインと申します。リセ様の専属アシスタントメイドAIです』


蛋白機械は見た目は人と区別がつかない。喋り方も動き方も人そのものである。レイのメイド服姿かわいいな。


ネーセルさんはワゴンに乗っていた剣を手に取った。


「!?これは見事な剣だ...」

「隊長、この食器、とてつもなく精巧ですよ!。王族が使っているものよりも高いのでは!」

「見たこともない宝石だ....リング状になっているのか!?」


騎士たちはそれぞれ手に取ったものに驚いていた。全部21世紀の百均、フォー・コインズで売ってるやつだ。


「こういうものもあります」


そう言って私は缶詰を見せる。日新のサバ缶だ。


「金属缶に密閉することで数百年間腐らないで保存することができます」

「「おお!...魚の煮付けか!?うまい!」」


次はコカクーラ。


「こちらはペットボトルというものです。液体を保存することができます」

「「なんだこれは、砂糖のように水が甘いだと!?それにシュワシュワしている!?」」


四菱の電気自動調理器。


「これは万能調理器です。具材を入れるだけで自動で調理してくれます」

「「魔道具なのか!?凄い...。しかもおいしい!」」


ユニシロの服たち。


「これはTシャツです。我々なら良質で大量に生産できます」

「「すごく着心地がいい...動きやすいし」」


アイポンのスマホ。


「アイポン21です。12k写真が取れます」

「「眩しい!?よくわからないけどすげー!!」」


かつてこのお菓子を巡って世界大戦が起きたらしいやつ。


「ツチノコの里とドクキノコの山です」

「やっぱツチノコだな!チョコが沢山あって美味しい!」

「なんだと、クッキーが多いドクキノコの方が美味いぞ!」

「「戦争だ!」」


いやあね、にさ、文明差がある国と交渉するためにはどうすればいいって聞いたら21世紀のショウセツカヲヤロウとかカドヨムっていうサイトで掲載されいた異世界に国家や要塞が移転する系小説を表示してきてさ。面白くて徹夜で読んじゃったんだよね。で、そういう系の小説だと、たいてい未来技術を見せてさ、現地民を驚かせるんだよね。


でも、今見せている品々、21世紀頃2000年前のやつだけど。

『はぁ....船長が21世紀の人だったら、原始人に縄文土器見せているようなものですよ』

とか言ってた。


「我々はこのようなものを貴国との貿易で大量に提供できる用意があります」


「な、なるほど。確かに凄いものばかりだ...。さっきの言葉は取り消そう、本国もきっとこのようなものを交易で入手できるなら荒れ地の一つぐらい譲れるだろう」


「ありがとうございます」


騎士たちも何やら話し合っている。


「さっきの飯うまかったな!」

「お菓子もおいしかったぞ」

「魔導具?も凄かったなあ」


「やっぱ天人っていうのは間違いじゃなかったんですよ!隊長」


副隊長さんがネーセルさんに興奮気味にまくしたてている。


「そうだな、とてつもなくすごい技術ばかりだった....」


ネーセルさんには何やらうつむいて考え込んでいる。


「これはお土産です。是非、もらってください」


缶詰や清涼飲料、お菓子、食器、剣、宝石類などをたくさん詰め込んだ箱を見せる。


「「おお!」」


「ありがたい、受け取らせてもらおう。貴方達と交易ができることに領主様や国王もきっと喜ぶだろう」


その後、騎士さん達に拠点のものをいろいろ見せたり説明したりした。あとMMSに剣持たせて副隊長さんと模擬戦もやったりした。


「ソウコウシャというのは凄かったな」

「副隊長があんなにあっさり負けるだなんて...やはり彼らは並のものではないな」

「キドウオウフクシャトルというものは魔導機関を使っていないらしいぞ。それであんな速度が出せるのか...」

「ドーナツというお菓子おいしかったなぁ」




☆☆☆


(side ネーセル)




私は先程から頭に入ってくる情報が多すぎて、脳死しそうだった。


天人は卓越した技術を持っているようだったが、本当に侵略者じゃなくてよかったと思う。まだ、ペルラシオ王国に敵対しないかは分からないが、彼女らは少なくとも今私達に有効的に接している。


さっきも思ったが、侵略するなら侵攻先の人間にここまで手厚く接客などしないだろう。


「リセ殿、そろそろ領主への報告の為に帰りたいのだが、これを受け取ってくれ」


私は自分の手記を渡した。


「これは...」


「貴方達が天人ならこの世界の常識には疎いだろう。私が思いつくだけのことを記しておいた。貴方達の土産に比べれば塵ほどの価値しかないが、参考にしてくれ」


周辺国家や魔道具、社会体制、生活習慣などについて書いたものだ。


「いえいえ、そういった情報はとても貴重です。ありがとうございます、助かります」


リセはペコリとお辞儀をした。


「次来るときは我が国の集大成の土産と使節団を連れてこよう」


「はい、楽しみにしています」


リセは笑顔でそう答えた。私よりも年下なによくこんなことができると思う。


部下たちを集め、竜車の支度を行う。村人達からなる軽歩兵にもリセがくれた飲料水とお菓子を配っておく。皆、その美味しさに驚いていた。


『船長、ゴニョゴニョ...』


ふと、リセの方を振り返った。メイドのレイが何かリセに耳打ちしている。


「ネーセルさん、これから領主のところに向かうんですよね?」


「ああ、そうだが」


どうかしたのだろうか。


「我々の輸送機で送りましょうか?」


「ユソウキとは?」


「あれです」


彼女らの拠点の建物の一つが、徐々に形を変えていった。巨大な引き扉が開いているのだ。


そこから現れたのはとてつもなく大きな何かだった。大きい筒に板をくっつけたような形をしている。


「大きい...」

「でっけえ...」

「なんだ...」


それは前進し、彼女らがカッソウロと呼ぶ道の中央で止まった。


「あれに乗ると...。いいのか?」


「はい、我々としても直接領主と対話したいですし、交渉が早く進む方がいいでしょう」


「...では、乗せてもらうとしよう。何人ぐらい乗れるんだ?」


「人だけであれば2000人は乗れるはずです」


「「...!?」」


西の機械文明の飛行魔導機械でも50人乗りのが最大だという。だとしたらこれは一体...。


「竜車ごと乗れますので、どうぞ」


村人も含めて全員がユソウキに乗った。


その飛行機械は後部が大型の扉になっていて、スロープから竜車が乗ることができた。中は明るく、驚くほど広かった。機内の前方にある座席はふかふかで、とても座りごこちが良かった。


『シートベルトをお締めください。間もなく離陸します』


そして、ユソウキは浮いた。そう、真上に浮いたのだ。窓の外に見える彼らの拠点がどんどん小さくなっていく。遂には雲を超えた。


「ふっ、ふ...」


「た、隊長!大丈夫ですか!?隊長ー!?」


あまりの驚きに遠のいていく意識の中で副隊長が肩をゆするのが見えた気がした。

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