第5話 side 領主~前兆

「領主様、これです。これが街をうろついていたのです!」


臣下の一人が目配せすると何人かが担いでを持ってきた。


「ほう」


何か白く四角いものに丸いものが6個、途中で曲がっている棒を介して繋がっていた。四角いものの上には棒が何個も伸びており、その先には水晶のようなものがはまっていた。


「これは何なのだ?」

「分かりませぬ。ただ、街をうろつき、この水晶を人に向けたりしておりました」


目撃者の話によると、ギーという音をたてながら街を走っていたとのことだった。村人が囲んで蹴ったりして取り押さえると動かなくなったという。


「魔物ではないのか?」

「さあ。ですが剣で切っても血を出さず、口も目もないので動物ではないのでしょうか」

「うーむ」


「領主様。確か、遥か西の帝国には地竜で引かなくても走る竜車、「ジドウシャ」というからくりがあると聞いております。これもその類なのでは」

「そうか。誰か、西の帝国に詳しいものはいるか?」


臣下達や村人達は話し合って、やがて一人の人物を思いついた。


「王都のはずれに住んでいるベルじいという者なら分かるかもしれません。かつて世界を巡る旅をしていたと聞いております」

「ではさっそく呼んでくれ」

「了解しました」


伝令兵が地竜に乗って王都の方へと走っていった。国王への報告も兼ねてだ。


「にしても、不思議なものだな」

「金属で出来てるのでしょうか?」

「どうしたらこんな直線に加工できるんだ!?」

「水晶があるが、魔道具なのか?」


そのを一目見ようと領主の屋敷に来た村人たちは皆、そのものの精巧さに驚き、そして様々な意見を交わしていた。


「きっと西の帝国のからくりに違いない!」

「いやいや、これは新種の魔物だ!」

「たぶん天神の道具だ!」

「王国の秘密兵器か!?」


中には的を射ていた推測もあったりした。


識別番号ローバー4号はそれらの音声データ及び映像を記録し、今までの観測データと合わせて予備のアンテナで付近に着陸している降下ユニットに送信した。降下ユニットはそのデータを軌道上の衛星に送信、衛星はそれをローディー・デイス号に中継した。

クインはデータを解析した後、ローバーの情報が現地民に漏れる可能性を考え、自爆命令を出した。その命令信号は先ほどの通信を逆向きにした形でローバーにとどき、内部の自爆装置のテルミット弾が作動した。


その時はちょうど村人達が近くにおらず、守衛が2人、ローバーに布をかぶせて見張っていただけだった。爆発は2人を襲った。


「何があった!」


領主は国王への報告書をしたためているところだった。


「な!!」


領主が駆け付けたときには服に着いた火の粉を必死に振り払う守衛2人と、水バケツを持ってくる他の守衛たち、そして燃え尽きてバラバラになったローバーの焼けカスが残るばかりであった。


そしてその様子を窓の外から一機のドローンが覗いていた。



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