第7話緑レンジャイの罪
緑レンジャイこと、林治虫80は団地暮らし。妻は専業主婦。
子供は男2人で、すでに孫がいる。その孫も大学生だ。
林は毎日、向かいの団地の様子を望遠鏡で確かめていた。
いつ、悪の組織ビョーマが現れるか分からないからだ。
夜7時。
いつもの、仕事。
向かいの明かりの向こうで、若い女性が服を脱ぎ始めた。
「もっと、もっと〜」
女性がブラジャーを外した。
「YES!YESYESYES」
若い女性のバストは爆乳だった。
「今夜も君に会えて良かった」
と、緑レンジャイは目の保養として、望遠鏡で眺めていた。
自宅の婆さんより、若いオナゴのミルクタンクの方が100倍興奮する。
ちょんちょん
と、林の方を突く者がいた。
「何だよ!邪魔すんなよ!」
「オホンッ!お父さん、お父さん」
林が振り向くと、警察官が2人立っていた。
「何してんの?お父さん」
「何をって……団地の安全を確認するのもゴレンジャイの仕事だよ!」
警察官は訝しがった。
「ゴレンジャイって何?」
「わしゃ、緑レンジャイじゃよ」
「あっ、向こうの部屋を覗きしてたんだね?」
「覗き?何それ!さっき、裸の女の子が着替えるまで、監視してんだよ!」
「裸の女の子?……お父さん、そう言うのを覗きっていうんだよ」
「ちょっと、聞きたい事があるからね」
「な、何だと!無礼者。今の日本があるのは、わしらゴレンジャイのおかげなんだぞ!」
警察官は呆れて、
「お父さん、何か身分証明書は?」
「もう、免許証返納したよ」
「でも、カードもらったでしょ?見せて」
林は、尻ポケットの財布を出して、カードを見せた。
「お父さん、ちょっと借りるね」
「えぇと、ナンバーの照会をお願いします」
と、言って警察官はナンバーを伝えた。
しばらくすると、
「お父さん、盗撮で3回捕まってるね?」
「盗撮?何じゃそりゃ?」
「女の子のスカートの中を盗撮したでしょ?」
「そんなぁ〜、時代もあったねと〜♪」
「誤魔化さないの、お父さん」
「ありゃ、確認じゃ」
「何の?」
「パンツの色の」
「ダメだよ!犯罪だよ!」
「わしゃ、緑レンジャイなの!正義の為には手段は選ばないのよ」
2人の警察官は話しこんでいた。
「ちょっと、認知症っぽいなぁ」
「お酒の匂いもしませんしね?何です、ゴレンジャイって」
「オレにも分からん」
「保護して、自宅まで送るか」
「そうですね」
「老人の徘徊は危険ですから」
「お父さん、この住所に送りますんで、一緒に帰りましょう」
「帰りましょうって、わしの家はここじゃ」
と、そばの扉を指差す。
警察官は緑レンジャイを家に戻した。
「次、見つかったら、病院か施設だからね。お父さん」
「はいはい、お巡りさんよ」
「ただいま〜」
「あら、あなた早かったわね。今日の街の安全は守ったって顔してますね」
「……つる」
「は?」
「つるって、お前名前じゃないか!」
「私の名前はチヨです。お父さん。ダメだわ。明日、病院へ連れていかなきゃ」
「ち、チヨ!晩飯食いたい。腹減った」
「あなた、30分前にカレーライス食べたじゃない。しかも、お代わりして」
「おぉ〜そうかい。もう寝る」
「まだ、7時半ですよ」
「80のじいさんは寝て育つと言うじゃないか?」
「そんな、ことばありません。明日、病院連れて行きますから」
「天馬博士のクリニックかの?」
「いいえ。大学病院です」
後日、緑レンジャイは認知症に近い状態であると判明した。
その日の晩も、望遠鏡で眺めていた。女の子はその日以来、見ることは無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます