実験施設にて

実験施設V76:105号室

記録日時:2023年4月11日金曜日/午後13時28分17秒より


☆☆☆


8mmビデオカメラの映像。

ガラス越しに、拘束こうそくされた狂人きょうじんと思しき二人の人物の姿。

左側には上半身裸の男性。右側には病院着を着た女性。

研究員達の会話。


研究員A:「被験者83に血清けっせいZを打ってからもうすぐで168時間経つ。そろそろだ」


研究員B:「ああ。正確には──3秒後だ、──ほら、"灰化停止はいかていし" が始まったぞ」


苦しみだす男の狂人。全身の血管が青く光り始める。

女性も苦しげな嗚咽おえつを漏らしだす。

数秒後、女性の肌が輝きはじめ、次第に、一瞬いっしゅん黒くなり、ついで灰のような色合いになりながら肉体が消えてゆく。

男性はまだ、もがいている。


研究員C:「我々の予想通りでしたね、室長」


研究員A:「ああ。このワクチンは我々の希望となりえる」


研究員B:「しかし皮肉なものだな、【ウォーカー】まがいを自らつくり出すとは」


研究員C:「己の敵を愛すという事は、ヒトにしかできないのでしょうね」


研究員A:「それは……(以降、画面が暗転)

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