TV番組『オールジャパンナイト』

TV番組:『オールジャパンナイト』

放送日時:2022年6月24日金曜日 午後20時

報道特集:農村部に暮らす、とある女子高生へのインタビュー

記者:鬼平判次:反政府及び反社会勢力の情勢に精通せいつう

特記事項とっきじこう:ライブ番組


☆☆☆


記者:「では、あなたはお母さんが【ヴァンプ】になっても、あなたをおそおうとしなかったのはなぜだと思われますか?」


少女:「うーん……」


(数十秒ほどの静寂せいじゃく


記者:「失礼しました、質問が悪かったかもしれません。では、こうおたずねしましょう。仮にあなたが【ヴァンプ】であったら、あなたは娘である『あなた』を襲うでしょうか?」


少女:「多分…襲わない……かな?」


記者:「それは、どうしてですか?」


少女:「んー……愛情、ですかね…?」


記者:「お母さんが、【ヌーン・ウォーカー】だと知ったのは何時ですか?」


少女:「何か、しきりに飲み物を欲しがってて…ほんと、何十種類という飲み物を次から次へと買っていました」


記者:「飲み物を」


少女:「はい。ビールから、高そうな古いワイン、ジュース」


記者:「でも、ついに、お父さんを襲ってしまったと」


少女:「はい。直前に、『もう我慢できない』と一言」


記者:「眼の前で、お父さんはまれたんですよね」


少女「そもそも、どうして【ヴァンプ】は人を噛むんですか」


記者:「これは我々や専門家の憶測ではあるのですが、なぜ同類を増やしたいかというのは、『名状めいじょうがたふるきもの』への捧げ物として、噛めば噛むほど、あるいはその噛んだ相手への思い入れが強ければ強いほど、その血が美味おいしく感じられ、そもそも噛んだ人間が一人でも多いほど、その数を『供物くもつ』として認められる、という話があります」


少女:「じゃあ、お母さんは…ずっと待っていたということですか」


記者:「そういうことかもしれませんね。──それで、お母さんが姿を消して、今日で一週間と数日になると」


少女:「はい。私も心配で、毎日の睡眠すいみんが3,4時間くらいですが、それでも帰って来る気配がありません」


少女:(顔をせて、静かに泣き始める)


記者:「そ、その…あなたの……首にある、その、点……」


(記者とカメラが一緒に突き倒される。暴れる音。記者のうめき声。録画記録の最後に、「これで仲間が増えた」という若い女性の声。


画面暗転あんてん、トラブル発生時のカットに差しえ。









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