第10話 報酬

【裏チュートリアル達成、コングラッチュレーション!】

『ダッシュ様。おめでとうございます。報酬を確認してください』


 俺はクソデカいゴブを倒した……らしい。


「私が仕留めるつもりだったのにぃ! ……ってやばっ。忘れてた!」

「やっぱ狙ってたんじゃねーか!」


 しっかしすげー威力だったな。倒したのはシザーズヒールなのか? それともユニークスキルの方か? くそ、分からねー。ログたどったりできねーのかな。つか、アゴどころか首ちょんぱってグロいわ。

 ……ってあれ。起き上がれない!? 

 なんだこれ。

 よく見りゃ視界が晴れやかで、夜から朝に切り替わった? 

 ……なんか、誰かに囲まれてね? 


「おい、終わったみたいだぜ」

「すげー、なぁ今のイベントフラグどうやったのか教えてくれよ!」

「え? ええ? なんじゃこりゃ!」


 気付いたら知らないPCプレイヤーキャラと思われる黒スーツ共や赤スーツ共に囲まれていた。

 ……MMOっぽい名前がいっぱいいるな。

 サメづくしさん、ポロリ期待さん、しに戻り上等さん、神様さん、姫マーク2さん……よし、誰ともかかわらずここを離脱しよう。

 一応いちおうリリに一言ひとことだけ……ってあれ? あいつどこいったんだ。


 しっかし逃げたくても足が動かない。困った。

 人見知りってわけじゃないが知らないPCに囲まれてるこの状況は結構怖い。

 全員情報が知りたくて目が血走ってやがるんだろう。

 まぁぶっちぎりで目が血走ってるキャラは俺だけどな! 

 この足が動かないのはスキルの影響だろう。

 デバフみたいなもんか。高威力にはデメリットつけねーと乱発されちゃうし。

 ああ、まじでここから離脱する方法を教えてくれ。


『パーティーから引き寄せの糸が使用されました。受諾しますか?』


 引き寄せの糸? 突然オメガさんからそんな言葉を……他のPCにはオメガさんのこと、見えてないんだな。

 全員俺の反応待ち。

 初日なんだから他にやることあんだろお前ら。


「受諾だ」

「えっ? ヒント? ……消えたーー!? ログアウトしやがったか!」


 その一言ひとことだけ告げて、俺は横たわったままどっかのビルの屋上にいた。


「配信、失敗よね」

「……さいですか。つか、お前の目的は俺の獲物を横取りして報酬を得て、配信用の道具にすることだったんだな!?」

「違うわよ。それよりもあんたの足、動かないでしょ? ユニークスキルを手に入れた一番手いちばんてがダッシュ君になるなんてね。レア称号、二つも先に取られちゃったな」

「レア称号? まじで?」

報酬ほうしゅうは自分で確かめてみればいいわよ。それと、もう少し付き合ってもらうからね」

「遠慮します」

「だからなんで断るのよ! こんな可愛い女の子がパーティーをもう少し組んであげるって言ってるのに」

「俺は自分で自分のことを可愛いだなどと言ってしまうやつと遊んでいる暇は無い。パクリマの世界にどっぷり浸かる! そのためにまずはスキル! そして道具を売買できる場所探し! さらには遠くに見えるくそでかい鎖を目指す!」

「……はぁ。鎖に向かうって、移動手段とか知ってるの?」

「東京湾だろ? そんなもの、電車で……あっ」


 電車、走ってるわけねえ! ライフライン死んでるなら道具も買えないのか? 俺のドポールでの休息は? つか、カネ持ってねーぞ俺! カネ表示はどこだろ。

 ……何も知らないってのにも限度があるな。

 右上に点灯してたサポートの印も消えちまったんだけど。


「や、やっぱり少しくらいはパーティーで遊んでもいーかなーなんて、ははは……」

「そう。それならパーティーメンバーとして報酬ほうしゅうも少しはもらってもいいのかしら? 私、途中からだったからなにももらってないんだけど」

「そんないい物もらえたのか? チュートリアルで」

「裏チュートリアルで目標を達成したからね。ユニーク確定の宝箱が一つひとつはもらえてるはずよ。あとはゲーム内通貨。それと消耗品アイテムがいくつか。私は回復薬が無いから少し欲しいわ」

「回復薬……おい! それはおすすめしないぞ。あれは猛毒だ。ほうれん草とテントウムシを混ぜ合わせて作ったような味だった」

「テントウムシ、飲んだことあるんだ?」

「いや、無いけど」

「……ふふっ。君って結構面白い人なんだね。試供品の回復薬は性格が悪い人が作ったのかも。まずはインベントリ確認してみてよね」

「そうだった。インベントリオープン!」


 ※インベントリアイテム、通常※


 エリア限定通信デバイス(地球)

 回復薬(塗布用)

 上回復薬、3個

 苦回復薬

 ユニーク装備確定宝箱

 ランダム装備宝箱

 スキル改変の書

 称号獲得用アイテム(裏チュートリアルボス)

 称号獲得用アイテム(最速ユニークスキル発見者)

 カーネの詰まった袋

 

 ※インベントリを閉じる※


 ……なんかスッゲーアイテム増えてる。

 装備と素材のところも新しいものが入ってるな。

 素材は今のところ見てもしょうがないし、装備だけ確認しておくか。

 

 ※インベントリアイテム、通常※


 シンプルナックル

 シンプルシールド

 リデンプションゴブリンの斧

 ゴブリンのこん棒

 ゴブリンダガー



 ……おい! あのでかい斧を手に入れてんじゃねーか! 

 あんなのどう使えってんだよ。

 そもそも装備できんの? 

 人が? 

 無茶いえ。人類の規模を越えてるだろ。

 実はあれか? 綿あめでできてる斧だってか? 

 地面に突き刺さってたけど地面が柔らかい豆腐だってのか? 


「くっ……なにその顔」

「笑うな! こっちは報酬ほうしゅう確認だけでも葛藤かっとうし脳が忙しいんだよ!」

 

 そうだ、俺を笑ったこいつに、苦とかついていた回復薬を後でやろう。


「オメガさんや……ごにょごにょごにょ」

『可能であると思います。試してみてください』


 くっくっく。

 ひそかにオメガさんに確認したら、できそうだ。


「おいリリ。約束の回復薬は後で全部やるよ」

「え、いいの? ありがとう助かる」

「しっかしこのゲームの通貨、カーネって」

「分かりやすくていいじゃない。カーネの袋もあった? それらは使ってみて金額が決定するの。なるべく運の要素を豊富にしてあるわ」

「運……そういやステータス欄にもLUCラックの値があったな」

「ランダムアイテムに関してはステータスの運は関係無いの。純粋なリアルラック。あんたなら相当いいんじゃない? なにせこの私とパーティー組めてるんだもの。ふふふ」


 こいつ言ったな。リアルラックだと? 

 百万円相当の商品ではなくパチモノが当たってのこの状況で言うか。

 

「なら見せてやるよ。どのくらい運がいいか、その結果をな! カーネの詰まった袋、使用!」

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