第6話 面倒ごとはミュートで
不機嫌な女子の声が通信機から聞こえてくる。
正直、今すぐ切りたい。
俺はパクリマの世界に旅立ちたいんだよ。
「悪いんだけど、あんたに付き合ってる暇は無い……です」
「リリの通信機を使ったあなたに、この私が協力してあげようっていう嬉しいお誘いよ。少しだけだけど」
「いえ全く。
「ちょ、待ってよ。女の子がゲームを
……なんか必死だな。
悪い気がしてきたが、イエスなんて答えたらもっと面倒なことになると確信した。
「別にオタクってわけじゃないし。本当にお気持ちだけで。ほら、全世界のオタク君がきっとあなたのことを、息を荒くして待ってますから。ね?」
「……いいわよ。ここまで言うつもりはなかったけど。私はね。廃神で配信のリリよ。どう? 少しは驚いた? あなたはあのリリと少しだけパーティーを組めるるのよ?」
「ん? 配信? どっかで聞いたことがあったような。あんまゲーム配信とか興味持って見ないから。よく分からねーや。そんじゃまたー」
「嘘でしょ!? 待っ……」
「おっと、確証は無いが通信切ると消滅するんだったか。オメガさん、音をミュートにできる?」
「ミュート? 待ちなさいよ! 女の子が……」
『承知しました。通信機の音声をミュートにしました。ダッシュ様。まもなくチュートリアルが開始されます!』
「とんだ邪魔が入ったな。さて、チュートリアルまじ終わらねーんだけど、どうしよう」
『マスターのレベルが上昇しているようです』
「はい? やっぱチュートリアルが原因だな。確認してみっか。リファレンス」
※※※※
Name:ダッシュ
Tribe:ヒューマン
Level:2
Class:無
Unique Name:無
HP(体力):25
MP(魔力):0
ST(スタミナ):20
STR(筋力):10
AGL(敏捷):20
VIT(耐久力):10
LUC(幸運):15
割り振り値:15
スキル
ワンツー、キック
装備
武器:シンプルナックル、シンプルシールド
頭:無
胴:サイバースーツ(黒)
腰:無
足:無
装飾品:無
※※※※
レベル5だと!?
もしや俺は未発見バグを利用して自動レベルアップを行っているんじゃないだろうか。
いやいや待て。故意にやってるわけじゃない。
ロールバック(不具合があった場合に運営側が巻き戻し、それらが無かったことにする行為全般)だけは勘弁だ。つってもなんも始まってねーんだけど。
これは不可抗力。そして解決しようと考えたところで……あの通信機から声がしたんだ。
そしてなぜか怒られそうになったのでミュートにした。
あの女の人、俺の状況とか知ってる感じだったな。
もしかしてなんか教えてくれようとしてたのか?
いやいや、パーティーがどうのとか言ってたぞ。それに配信者ならネタに使われるかもしれん。
こっちは目立ちたくない。しかもいまさら音量上げたら怒鳴られそうだし、ここは自己解決だな。
「よし。ちょっとおっかないが外に出てみよう。落下するゴブリンの位置が正確になるかもしれない」
『ダッシュ様。ステータス割り振り値が残っています』
「敏捷性に全部突っ込んどくか。この数値だとまだまだ低いんだろうな」
出来れば復活ポイント変えたいんだけど。
また空からビルに落下ってのは勘弁だわ。
つか、まだゲーム始まってすらいねーよ。
下に降りればこの世界の文明とか少しは分かるかな。
■???屋上扉前■
この扉を開けば下に降りられそうだ。階段もリアルだが、エレベーターとか無さそうだから、電気がまともに供給されて無いってのはマジみてーだ。
代わりに青白い変なやつが階段から降りる俺を灯してくれた。
暗いところなんも無かったら見えねーしな。
建物に埋め込まれてるみたいだが、なんだろこれ。
「今のところ
■立川南口駅付近■
下まで降りると外には簡単に出られた。
ここ、まんまクラブセポ立川だわ。でも歩道と車道の境目がないな。反対側の建物にも見覚えがある。ドポールだ。ミライサンドセットでカフェラテでも飲んでまったりしてーな。
これらって未来にも残ってるってことか?
立川南口の駅付近で間違いないだろうが電気がなきゃゲーセンはやってられんだろ。
……店の中、UFOキャッチャーとか普通にあるじゃねーか。
っと、ちょうど空から物体Xどもが地面に落下するとこだった。
……思ってたより落下がぐろかった。消え方はデジタルっぽいけど死に方はデジタルっぽくない。
俺はこいつらを何回落下死させたんだろうか。
手合わせておこ。
これ、チュートリアルで経験値入る仕組みってまずかったんじゃないのか?
でもゴブリンって最弱のモンスターだよな。
経験値は低いはずだろうし、チュートリアルも再度行えるってことだよな。そうするとレベルアップも想定範囲か。
変な称号とかついてなければいいけど。
『マスター。まもなくチュートリアルが開始されます!』
「本当に始まってくれるんですかね……なんだこの赤いメニュー告知? さっきまでと違……」
【アナザークエスト、チュートリアル・裏】
『チュートリアルが規定回数以上、達成条件を満たしクリアされたことにより、裏チュートリアルが開始されます』
「……裏ぁ?」
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