第3話 パクリマスオンラインの仕様
■立川、自宅■
……夢の中にまでオメガさんがでてきた気がする。
日が眩しい。朝……か。何時だろ。
時計を見ると、昼が大分近かった。誰も起こさなかったってことは全員自由に出かけてるんだろうな。
我が家には日曜日こそフリーダムデイとして、互いに干渉せず自由にしていいという決まりがある。
つまり飯も掃除も自分でやる。
台所にはお決まりのカップ
洗い物は使ったら自分でやらないと、後日ひどい目に合う。
使ったものの掃除も全部その場でやる。
そうしないと全員分の掃除を翌週に全てやらないといけない。
原則、家族ルールってやつ。親に全く干渉されたくない日だってある。
そんな話をヨナとしてたら、いいじゃんやろうぜってことでそうなった。
親父とナギサちゃんはあの年でもデートだろう。
ヨナは歌劇の習い事かな。趣味が合わないってのはまさにソレだ。
あいつは昔から俺に女装をさせたがる。そしてあいつは男装をする。
いつか寝てるときにワンピースをあてがわれていて激怒したことがあった。
……んなこと思い返してる場合じゃなかった。
「あっべ、アキトとヒナタに連絡しねーと。あいつら怒ってるかなー……えっと携帯はテンプルヴァイスに突っ込んだままだった。あーーー! メッセージ三百件ってあいつら
メッセージの最後をみると深夜までパクリマスオンラインの内容だった。
これじゃまだ寝てんだろな。
「寝てた……と。送信完了」
あいつら起きるまでパクリマの予習でもすっか。
って携帯がぶるって落としそうになった。
「ん? 電話? あれ、アキトか」
「やっと起きたなダッシュ! まだ始めてないよな? な?」
「なに言ってんだよ。昼からだろ?」
「キャラメイクの途中まで出来るんだろ? 朝届くっつってたのに配送遅れてまだ届かないんだよ。頼むよ、待っててくれよぉー! ってそれどころじゃなかった。ダッシュのことだから事前情報見てないんだろ? 始める種族で開始可能な地点、変わるみたいだぜ」
「まじ? 実はさ。あまりにもテンプルヴァイスが凄すぎて……いきなり宇宙飛んだわ」
「それオープニングデモだろ。ベータ終わっても見れるんだな。えーっとたしか魔族とか選ぶとあっちの星から始まるらしーぜ」
「ふーん。アキトはどれ選ぶつもりなんだ?」
「俺は自宅から始めたいからヒューマン」
「そんじゃ俺もそれでいーや」
「種類沢山あるみたいだけど、いいのか?」
「ああ。だって魔族とかよく分からねーし。現実と近い感じで遊んでみたいんだよな」
「ヒューマンでも魔法は覚えられるようになるらしいぜ。いまいちよく分かってないけど」
「んー、俺はそっち系パス。あの感覚で魔法とか使っても上手く出来なそうだし」
「そんなにむずそうなの?」
「むずいっつーか、現実? 触覚とか温感とか、とにかく五感全てに作用する。フルダイブってすげーよな」
「早く来い俺のテンプルヴァイス!」
「ははは……ヒナタはどうするって?」
「チャットたどってきゃ分かるけど、ヒナタはちょい遅れてからプレイするから魔族側選択するかもだってさ」
「そっか。とりまアキトと二人でだな。開始位置どうやって選ぶんだ?」
「分かんね。ヒューマンなら東京は少なくとも選べるっぽい。こっち側は進軍してきたモンスターとバトルしつつ……」
「おいおい待て待て。なんだよ話ぶっ飛び過ぎだろ!」
「本当なんも見てねーのかよ。ざっと内容を話すぞ」
パクリマスオンラインの舞台は西暦2050年くらいを想定しているらしい。
突如として東京湾に巨大な鎖、カルメルタザイトチェーンとかいうのが撃ち込まれたという。宇宙から見たあの鎖だろうな。
全てはそこから始まった。
その鎖は地球上の電波を機能不可能にさせ、蓄電された電力を全て吸収してしまう。
地球は鎖の破壊を試みたが傷
愚かにも戦術核まで持ち出したが、まるで飲み込まれるようにして吸収され、無傷だったという。
「つまりプレイヤーの目的は鎖をどうにかするレジスタンスってことか?」
「いや? 自由だよ」
「……へ?」
「考えても見ろよ。RPGだぜ? ダッシュだったらその状況でどうしたい?」
「俺は……そうだな。スライムとかゴブリン見てみたいかな。異世界とかおっかないから地球でだけど」
「だろ? それがパクリマスオンラインのいいとこなんだよ。その世界でプレイヤーがなにをどうしようが勝手。ガチガチにストーリー進行なんてやる必要はない。送電線が使えないから電気とかどうなってるか分からないけど、まったく電力が無いわけじゃないだろうし。つか、ヒューマンつったってただの人ってわけじゃないだろう。鎖で繋がれた世界からいろんな武器とか防具とかも送られてきてるんだよ。鍛冶とかもできるみたいだし。PVPもエリアによっちゃ許可されてる。おまけに戦闘もリアルタイムアクション以外にターン制バトルまであるらしいぜ?」
アキトの情報過多による攻撃により情報の渦に飲まれた俺は頭がクラクラした。
興味あることを全部記憶するっつっても多量過ぎるの辛いわ。
「どうやってやんのか想像もつかねー。わり、キャラメイクしてきていい?」
「
「インゲームアイテム? 無料でついてくるアイテムか」
「大体は見た目装備とかそんなんだけど。ルリ色の通信機ってのがベータであったらしくてさ。ゲーム始まってそれあったら買いますってのがすでにネットで公開されてた。海外でだけど」
「売れんの? つかインゲームアイテム速攻で売っていいの?」
「お前本当になんも見てないな。このゲームNFT超優遇してるよ。パクリマの公式HPがリアルでの仮想通貨取引市場になってる。ルリ色の通信機、たしか六千ドルだったかな」
「六千ドルだとぉーー!? ……それっていくらだ?」
「日本円で百万くらい」
「……テンプルヴァイス沢山買えるじゃねえか」
「他にもインゲームアイテムがかなり値段つくものあるらしーぜ。手数料は取られるけどいい仕組みだな。公式通じてアイテム移動させないと、所有権ロストしてアイテムだけ消滅するらしい」
「考えてんな。
「そうじゃね? そこかしこにカネ落とす仕組みちゃんとあるんだから、さすがは六条寺だよ。パクリマ
「ってことはあれか。装備品にシノクロのマークとかついてるのか! うけるわー」
「はっはっは。試着して気に入ったらそのまま公式通して仮想通貨で商品買えるらしいぜ。お前もパクリマの公式
「すっげ。分かったー、あれー、なんか音がー、遠くにー聞こえる。電波かなー。鎖のせいかー?」
「おーい声が遠くなってるぞぉー! ダッシュー、待っててくれよぉーー! おーい、おーーー……」
悪いなアキト! そんな面白い話聞いたらさ。
「もう待ってられん! すまん! 先に旅立つわ! だって俺、ダッシュだしな!」
炭酸ドリンクを一気飲みして、缶を洗って片付け。
部屋に駆け込みテンプルヴァイスに飛び込んだ。
この高揚感。
いよいよ開始秒読みだ。
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