欠如

 ちょっと面白いから日記を書いてみた。



 あれから一ヶ月。といっても、俺達の一ヶ月計算は当時の年月で言ったら100年くらいは過ぎていることを知り、だいぶ戸惑った。

 ⋯⋯時間感覚が今の母船だと違うらしい。


 まぁ発達した文明だ。やる事よりも覚える事が非常に多かったのだが、俺としては新しい発見が多くて嬉しい。


 一ヶ月の間に多くのことがあった。

 まずは俺の歓迎会を開いてくれた事かな。全員、肉体は完全に人間というのもあり、かなり楽に受け入れが早かった。


 アンドロイド?とは少し疑問だが。


 大量のプレゼントというものだから何かと思ったのだが、まさかのパッケージの贈り物だった。

 最初は頭の上にはてなが乗っかったのだが、今の彼らは個人個人に様々なパッケージを作成する事を許可している為、色んなアイディアのパッケージを個人で持っている事も多いらしく、公開されていない非公開情報のパッケージはかなりの価値があるそうだ。


 というか公開パッケージの方もエグいのがいっぱいあったが。


 そんなこんなで歓迎会はあっという間に終わり、俺は勉強という名のDVRで様々な事を習得した。


 まずは戦闘術だ。

 空間を利用して、毎日2時間程充てた。


 脳機能のレベルが高くなった事もあり、理解から本日の復習までのルーティンの植え付けがスムーズだ。

 習得が大体一回から2回で終わる。

 インストールすればいいのだが、それでは味気ない。


 終わったら歴史の追体験とドライブ。

 最初はこんな感じで過ごしていたのだが、ある時からイベルワからセントラルエリアに案内された。


 セントラルエリアは俺と彼しか入れない全ての情報が詰まった文明の心臓部だということでだいぶ緊張した。


 まぁ俺がここの君主だという話を受け、しっかりと今後の為にも色々な事を学んでいこうと思う。




 二ヶ月にもなると、かなり慣れて自分がどういう状況で何をすればいいのかなんとなく理解してきた。


 今ではしっかりと話を聞いてどういう理解をすればいいのかを結構分かってきて様になっているかなと思う。


 とはいえやる事は変わらない。

 ただ変わったのは、必要な事はインストールするようになったことくらいだ。

 流石に覚えることが多すぎてインストールしないと追いつけないことが多々あるからだ。


 時間があるからやりたいことを色々やっていく。

 この時には戦艦に実際に乗ってみたり、飛行バイクやドローン操作にも慣れてきて色々な事を試したりもしている。


 まぁ特に面白い話が無いから、日記はこのくらいにしておく。


 


***



 「イベルワ!産まれたぞ!」

 

 「おぉ⋯⋯産まれましたね!ネスト様」

 

 ──虎人。安直過ぎるが、ジェネシスが作成していた遺伝子は本当に種類が多く、思わず頭がパンクしそうになるほどだった。


 量子シミュレーションによって様々な遺伝情報が保管されているところで俺は、面白い情報を発見した。

 ジェネシスが創ろうと本当に出産一歩手前まで進んでいた生命プロジェクトの中に、虎人という面白い種類の生命があったからだ。

 

 どうやら虎と人の遺伝子を上手い具合にくっつけて人間優位のまま身体能力を上げた生命体らしい。

 亜人⋯⋯っぽいよな。


 とりあえずこれを使って早速繁殖用の星に降り立って虎人達を離して様子を眺めて見ることにした。 


 「イベルワ、虎人たちどんな風になるかな?」


 「虎人は戦闘力が強化されている種ですから、繁殖と繁栄も早いと思いますからあっという間に進化するでしょうね」


 今回に向けてイベルワに話をしたところ、星を妊娠させて適している星を作るという事で、解決した。

 

 俺達はいくらでも適応可能になっているので変わりはないのだが、虎人たちは俺達の空間にいてしまっては死んでしまう。なので致し方ないのだが、こうして繁殖用の星に置いて俺達は母船に戻ってからカメラで眺めていくことにした。


 「設定は5歳くらいですね」


 「それくらいが良いの?」


 「まぁ当然のように知能を持って産まれることは銀河が出来上がる事くらいあり得ないことですから、こういう風にしておけば問題ないでしょう。気がついたら出来ていたが正解です」


 そうして初めて創り出した『虎人』というこの星にとっての主人公のアダムとイブが誕生した。

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