初デート

映画終了

場内を出ると、パッと明るいフロアが広がり、目が眩みそうになる。



不意に藤本陽生が立ち止まり、「待ってるか?」と視線を向けた先には、【TOILET】と表示されていた。



「あ、行きます」



あたしが動いたのを確認すると、藤本陽生は先に男子トイレへ向かって歩いた。



その後で女子トイレへ行くと、何人か並んで待っている―…



同じように立ち並ぶと、ふと溜め息が漏れた。



トイレを出れば、デートが終わってしまう。



思い描いていた男女のデートとは違うけど、凄くドキドキして、嬉しい時間だったから、あたし的には満足な時間だった。



この日のデートを胸に、これから先、生きて行ける気がした。



嫌な事があっても、これを力量に頑張れる。



本当に、そう思えた。



トイレから出ると、いつから待っていたのか、たった今来たのか…藤本陽生が少し離れた場所に立っていて、



「あ…お待たせしました」



近づいて、ペコッと頭を下げた。



「行くぞ」


「はい」



歩き出す藤本陽生に付いて歩くあたしは、心の中で何度も「ありがとうございました」と呟いた。



誰にという事も無く、今日のこの日に、感謝していた。



ズカズカ歩く藤本陽生に続いて、映画館を出る。



「あの、今日はありがとうございました」



待ち合わせ場所で解散。そう思ったから、最後にお礼を口にした。



送ってくれるなんて期待してないし、この後どっか行かない?なんて誘われるとも思ってない。



だいたい藤本陽生ってゆう人間は、嫌々仕方なく今日のデートを過ごしてるんだから、今すぐにでも帰りたいんだろう。



「腹減ってねぇのか?」



…――その筈だった。


どうして何故…



「え…?」



期待してしまう。




「腹減ってんなら、飯食いに行かねぇか?」



藤本陽生は最後の最後であたしの予想を大きく裏切ってくれた。



「二人で、ですか…?」



どうゆうつもりか分からないから、疑ってしまう…もしかして、あたしが知らないだけで、シゲさんが後から来るのかもしれない。



だって二人な訳が…




「嫌ならいい」




二人でなの!?



「帰るぞ」



二人で行く気だったらしい藤本陽生は、気が短いのか、諦めが早いのか…あたしの返事も待たずに歩き出した。



「あ、待って!」



咄嗟に駆け寄り、



「嫌とか言ってないです!行きます!」



急いで伝えると、怪訝な面持ちで睨まれた。



面倒くせぇなって思われたのかもしれない。



だけどあたし、嫌とも行かないとも言ってないのに…


そもそも返事すらしてないし。



「マジで来んのか?」



自分から誘っといてそんな事を言うから焦った。



藤本陽生の表情が呆れてるようで、鬱陶しそうにも見えるから、益々血の気が引いて行く―…



あのお誘いの言葉は、藤本陽生流の社交辞令だったのかもしれない。



だとしたら、しくった…


完全にやらかしてしまった…


社交辞令に本気で答えるなんて終わってる…



そうか…だからあんなに引きが早かったんだ。


最初から食事に行く気なんて更々ないからだ。



どうしよう!!


どうしたらいい!?




「あ、あの…」


「腹減ってんだよ俺」


「あ、すいません…」


「行くんなら付いて来い」


「あ、はい…はい?」



視線を上げると、藤本陽生は背を向けて歩き出してた。



もうどれが正解か分からない。


映画だけ見てさよなら。かと思えば、食事に誘われ…


誘ってくれたのかと思えば社交辞令で?


それに本気で答えるあたしに、気分を害したのかと思ったのに。



…分からない



どれが正解か分からない!



結局あたし達は…ご飯を食べに行く?感じであってる、よね?



映画館の通りを駅前とは反対に歩き出した藤本陽生は、見慣れた通りへと足を進めた。



そこは―…あたしの良く知る場所。



繁華街を抜けると、キャバクラやスナックと言った、いわゆる飲み屋が集結する通りがある。



【CLUB桜】


その文字を一瞥して、すぐ視線を前へ戻した。



その通りから路地へ抜けると、【カフェ・レストラン四季】と書かれた看板のある店の前で、藤本陽生が立ち止まった。



【今日のおすすめ】と、チョークで記された小さな黒板が、観葉植物と一緒に入り口の隣へ立て掛けられている。



入り口の壁には、ランプが飾ってあって、こんな所に、こんな洒落た店があったのかと、関心するあたしを置いて、さっさと引き戸を開ける藤本陽生は、店内へと足を進めた。



戸が閉まる前に慌ててその後ろを付いて歩くと、静かな空間が広がっていた。



どうやらお客さんは居ない…とゆうか、お店の人も見当たらない…



とか言う前に、電気の付いてない店内は外の日の光で明るさを保っていて、営業時間じゃないのかもしれない。


入っても良かったのかな?と不安が過ぎるあたしは、



「おい!」



店の奥に向かって大きな声を出す藤本陽生に、ビクッと肩が震えた。



まさか店員が出て来ないからって「どうなってんだこの店は!」なんて、キレ出したのかと焦った。



営業時間外とゆう可能性もある中で、どこでもかしこでもキレるもんじゃないよ!と、叫んでやりたかったけど出来なかった。



それはあたしがヘタレだとか、ビビりだとかって事じゃなくて、



「…っるせんだよてめぇ!準備中に来てんじゃねぇ!」



店の奥から聞こえて来た男の人の怒鳴り声に、言葉を発するどころか息が止まるかと思った。



「二人分頼むわ」


「はぁ!?」



未だ姿の見えない、奥に居るらしい怒鳴り声の主にそう告げると、


「ここ座れ」


いくつかあるテーブル席じゃなく、目の前のカウンター席を指して、あたしに座るよう促した藤本陽生は、その隣へ先に腰掛けた。



「シゲも来てんのか!」


「いや、シゲは来てねぇ」


「は!?じゃあ誰だよ!」



あたしが腰掛けたのと同時に、



「あ、」


「…あ」


「あ、いらっしゃい」


「…あ、こんにちは」



奥から出て来た人に、慌てて席を立ち、頭を下げた。



「さっき怒鳴っちゃってごめんね」


「あ、いえ…」


「まさか女の子が居るとは思わなくて」



さっきの怒鳴り声とは一変して、落ち着いた言葉を発する男性は、ちょっとイカツイ。


怒鳴り声を聞いた所為か、強面な人にしか見えなくて…


キャップを深めに被ってるからハッキリとは分からないけど、見た感じ二十代後半?と思われる。



「何食べたい?」



どうやら男性はコックさんらしい。



「あ…えっと…」



何を注文したら良いのか分からず、とりあえずメニューを探してキョロキョロと辺りに視線を向けた。



「あ、メニューに載ってるのは、今仕込み中だから作れないんだよね」


「…あ、そうですか」


「うん、だから食べたいの言ってみ?」



そう言って優しく笑ってくれた男性は、白いユニフォームが良く似合っていた。



「遠慮しなくていいよ?陽生なんていっつも時間外に来て、偉そうに「飯作れ」とか言ってくっから」


「そんな偉そうに言ってねぇ」



会話に入って来た藤本陽生は、言葉同様、不機嫌な面持ちで「俺、肉」とキャップを被っている男性に告げると「同じで良いか?」と、あたしに同意を求めて来た。



だけどそれが、強制にしか聞こえないから、早くしろと急かされてる気がして、声も無く頷いた。



「陽生と同じで良いの?」


「はい」


「でも、他に食べたい物あるなら」


「大丈夫です!同じ物で」



本当に嫌じゃなかったから、遠慮してないように見せる為、精一杯明るい声でそう告げると、男性は「了解」と頷いて、店の奥へと入って行った。



再び二人きりになった店内は嫌に静かで、落ち着かないから気を紛らわす為に店内を見渡した。



店内は木目調になってて、所々に置かれた観葉植物が、暖かい雰囲気を作っていた。



入り口の壁にあったのと同じようなランプが、店内にも置かれている。



入り口から入ってすぐ左にカウンターがあって、その奥にテーブル席が四つ見えた。



あたし達が座ってるカウンターの奥は、厨房に繋がっているようで、「あ、水出すの忘れてた」と、さっきの男性がお水の入ったグラスを二つ、カウンター越しに渡してくれた。



また厨房へと入って行く後ろ姿を見つめながら、


「知り合い…ですか?」



“どうゆう”知り合いか?とは、聞けなかった。




藤本陽生は早速グラスを手に取ると、半分近く飲み干し、



「あれ、兄貴」



厨房の方を見つめたまま、



「えっ!?」



驚くあたしを気にも留めず、コトンとグラスをカウンターに降ろした。



敢えて、当たり障りの無い聞き方をしたのに、あっさりと教えられた関係性が、まさかの兄弟!?



「お、兄さんですか…」


いきなりの身内登場に、パニックを起こしかけてる所為か、口が上手く動かない。



「一番上の兄貴」


「あ、へぇ…」


「ここ兄貴の店」


「お兄さんの…」


「……」


「凄いですね…」



脳内がポワーンとして、雲の上にでも居るような感覚だった。



お店を経営しているお兄さんが居るなんて、あたしからしたら憧れるぐらい凄い事で。


まさか藤本陽生のお兄さん…身内に会えるなんて更に凄いと思った。


ましてやそのお兄さんのお店に連れて来て貰えた事に凄く凄く感動していた。



「シゲさんと良く来るんですか?」


「…あぁ、他の奴らとも良く来てる」



感動したのも束の間、どうやらここに誰かを連れて来る事は、それ程珍しくは無いらしい。



だけどあたし的には、藤本陽生の領域に入れて貰えたような気がして、心臓が震えるぐらい嬉しかった。



聞いてみたい事がたくさんあった。

だけど聞くのは辞めとこうと思った。


藤本陽生にとって、面倒臭い女にはなりたくない。



だからって他に話す事も無いから、必然的に沈黙が続く。



営業時間外の店内には、厨房から微かに調理中の音が聞こえていた。



する事も無いから、隣の椅子に置いていた鞄から携帯を取り出して、時間でも確認しようかと思った。



こんな時間にここでご飯を食べてしまうと、家にある晩御飯はもうお腹に入らない。


母に作らなくて良い。と、連絡入れようか迷った。


事前に言えば手間を取らせなくて済む。



だけど夕方とゆう時間だけに、もう夕飯の支度を始めているかもしれない。



そう考えると、連絡するのは辞めとこうと思った。



ここでご飯を食べたら、帰りに少し歩いてお腹を空かせれば良い。



そうしよう。



携帯を鞄に入れ直すと、



「時間、大丈夫か?」



隣から、藤本陽生が今更な事を口にした。



「大丈夫です」



そう言いながら視線を合わせると、藤本陽生は「そうか」と、あたしの手元を見つめていた。



あたしが携帯を見ていたから、時間を気にしてると思われたのかもしれない。



「大丈夫です」



もう一度頷くと、藤本陽生は何も言わずに、またグラスを手に取った。



「お待たせ」



両手にお皿を二つ抱えて、お兄さんが厨房から出てきた。



「はいどうぞ」


あたし達の前に置かれたのは、豚の生姜焼き。


それからライス。



チラッと隣を見ると、藤本陽生のお皿には、あたしよりも多めにご飯が盛られていた。



「頂きます」



割り箸を受け取り、お肉を口元へ運ぶと、食欲のそそる匂いが胃袋を刺激する。



「おいしい…」



あまりの満足度に目を見開くと、「ありがとう」と、お兄さんが笑ってくれた。



隣の藤本陽生は無言で箸を進めている。


美味し過ぎて言葉が出ないのか、ただ単にお腹が空き過ぎてそれ処じゃないのか…分からないけど。



良い食べっぷりだな、とは思う。



向き合って食事してる訳じゃないから、思いの他緊張しなかった。



ただ、カウンターの中で椅子に腰掛けてるお兄さんが…



「名前、何て言うの?」



めちゃくちゃ見ている。



「…春、です」



あたしを!!!



「ハルちゃんって言うの?」


「はい…」



話しかけてくるから食べるタイミングが分からず、一口食べては箸を置くような状態だ。



「え、“ハル”だけ?」


「…そうです」


「どうゆう漢字書くの?」


「えっと、春夏秋冬の春です」


「へー!凄いね!」


「…どうも」



大袈裟な反応をするお兄さんは、



「俺、アキカズ。よろしく」



改めて自己紹介をしてくれた。



「アキカズさん、ですか…」


「明るいに和むで、明和」


「そうですか…」



相槌を打って、パクっとお肉を一口味わった。



「陽生は太陽の陽に生まれるで、陽生」



知ってます。とは言えないから「へぇ…」と小さく呟いてみた。



「何か気づいた?」



ドヤ顔の明和さんは、どうやら黙って食べさせてはくれないらしい。



「何か…って?」



おまけに、何が言いたいのかさっぱり分からない。



「分かんないかなぁ…」


「…はい」


「俺らの名前、季節の読みが入ってんだよ」


「…あぁ!」


「分かった?」


「はい」



藤本陽生は(“ハル”キ)だから、季節で言うと春が入ってる。


明和さんは(“アキ”カズ)だから、秋。



「俺ら兄弟、春夏秋冬いるんだよ」


「あ、だからお店の名前、“四季”なんですか?」


「そうそう!春ちゃん賢いね!」



嬉しそうに笑ってくれる明和さんの言葉に、ふとシゲさんを思い出した。



「春ちゃんと陽生は同じ季節だね」



明和さんの言葉に、ドキッとした。



「陽生先輩は、春に生まれたんですか…?」



隣に居るのに、本人の方は何だか照れ臭くて見れなかった。


だから正面に居る明和さんに聞いた。



「そうだよ。陽生の誕生日知らない?」



だけどそれは、あたし自身を落ち込ませるもので…


仰る通り、あたしは藤本陽生の誕生日を知らない。


だけど「知らない」って言えなくて…曖昧に笑った。



「もう良いだろ」



突如、明和さんへ言葉を向けた藤本陽生は、食事を食べ終わったらしく、


「早く食べろ」



なかなか箸が進まないあたしにも、急かすように呟いた。



言われた通りに食事を進めたあたしを見て、明和さんが声も無く微笑んだのが分かった。

 


「で、今日どこ行って来たんだよ」


「煙草吸って来る」



話しかけてる明和さんの言葉をスルーして、立ち上がった藤本陽生は、


「ポイ捨てすんなよ!」


そう叫んだ明和さんをやっぱりスルーして、お店から出て行った。



どうやらこのお店は禁煙らしい。



「アイツ…感じ悪いだろ?」


明和さんの呆れた口調が耳に届いて、そうですね。とは口にせず、曖昧に笑っておいた。



「良いんだよ、正直に言って。陽生に一々言ったりしねぇから」



根拠は無いけど、この人は本当に言わないだろうなと思った。


藤本陽生のお兄さんだからって理由じゃない。


何となく、本当に、漠然と、言わないって言ってるから、言わないんだろうなと思った。



「春ちゃんは、陽生と同じ学校?」


「はい」


「じゃあシゲの事知ってんだ?」


「はい」


「そっか」



明和さんは、やけに優しく微笑んでた。



「アイツ、学校でどんな感じ?」


「え?」


「仲良いんでしょ、春ちゃん」


明和さんは、入り口の窓から見える藤本陽生を見ていた。



「仲…そうですね」



“彼女”なのに、胸を張れない自分が嫌になる。



「相変わらず?」



藤本陽生の事は、あたしより明和さんの方が知っている気がする。



「周りと上手くやってんのかな?」


「そうですね」



…見る限りでは。



「いつもお友達がたくさん周りに居ます」


「そっか」



明和さんは安心したように柔らかい笑みを浮かべていた。



「じゃあもう吹っ切れたのかな?」



カウンターの下から椅子らしき物を引き出した明和さんは、そこへ腰掛けた。



必然的に、目線が近くなる。



「吹っ切れたって…?」


「あれ?彼女には言ったって聞いたけど…春ちゃんだろ?」


「え?」


「春ちゃん、陽生の彼女だろ?」



どう返事をして良いか分からなかった。だけど返事をしない訳にはいかないから、


「…はい」


間違っていないのに、心が騒ついた。



「だよね?良かった…俺、余計な事言っちまったかと思った」


「…大丈夫です」


「うん」


柔らかい笑みを作る明和さんは、


「アイツ、あの子の事、相当好きだったろ?」


「え?」


「あ、春ちゃんは相手の事までは聞いてない?」



あたしを一気に奈落の底へと突き落とした。



「そうだよな…まぁ相手の事はいいんだ。アイツ、何回か俺にも相談ってゆうか、忘れらんねぇってボヤいてたから」



血の気が引いて行くようで、上手く表情が作れない。



「一生彼女なんて出来ねぇかも。って言ってて」


「…それって、前の彼女の事ですか…?」


「え?違う違う。片思いだよ」


「…片思い」


「いつまでも引きずってっから、心配してたんだけど。まぁ、春ちゃんとも仲良くやってるみたいだし、安心したよ」



…――明和さんの声が、遠くなって行く。



「陽生先輩は…」



入り口の外で煙草を吸ってる藤本陽生に、ゆっくりと視線を向けた。



「あ、陽生には今話した事、内緒な?」



…――陽生先輩は、今もその人が好きなんですか?


そう言いたかった言葉は、明和さんに遮られ、あたしの思いを表すかの様に、ゆっくりと呑み込んだ。



「春ちゃん…?」



明和さんの声が耳に届いて、



「食ったか?」



眺めていた入り口から、同時に藤本陽生が入って来た。



ゆっくりと頷いたあたしは、頭では分かっていても、心が整理出来てなかった。



藤本陽生にきちんと頷けたのか分からない。


気づいたら、隣で藤本陽生がお水を飲んでて、



「帰るぞ」



そう言って立ち上がったから、あたしも急いで席を立った。



「いくら?」



カウンター越しに明和さんへ話しかけた藤本陽生は、手に財布を持ってて、


「今日は奢りだ」


座ったまま口を開いた明和さんに「ご馳走様」と返した。



「ご馳走様でした。ありがとうございます」


「うん、また来てよ」



続けてお礼を口にすると、やっと立ち上がった明和さんに見送られ、あたし達は店を出た。



心がモヤモヤと渦巻いて、前を歩く藤本陽生が霞んで見えた。



「どうやって来た?」



少し歩いた所で不意に振り向かれ、


「映画館までどうやって来た?」


せっかちに何度も同じ質問を繰り返す。



「タ…電車で来ました」



タクシーで来たとは、言えない。


高校生が易々とタクシーなんて使ってたら、怪しまれるかもしれない。



「そうか、家近いか?」


「はい」


「じゃあ一人で帰れるか?」


「…はい」


「じゃあ、」


「あの…」



声が思いの他、震えていた。


黙ってあたしの言葉を待つ藤本陽生が、気怠そうに方眉を釣り上げた。



「今日は、ありがとうございました。凄く楽しかったです」


「礼ならいい」



この人は、どこまでもあたしを突き放すんだ…



「じゃあな」



背を向けて歩き出した藤本陽生が、今度は滲んで見えた。



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