第12話:不穏な空気

 満月が照らすアスカリアの森。護衛の馬車はランプで前方を照らしながら突き進んでいた。

 当初は文句を言っていたグランだったが、自分達の意見は聞かれない事で諦めたのか大人しく、レインと地図に魔力を当てながら自分達の現在を確認していた。


「……ん?」


 地図を眺めていたグランが何かに気付いた様に目を険しくし、レインもその反応に気付き地図を見る。

 探検ギルドが制作しているだけあり、完成度の高い地図。

 そんな地図故にレインもグランの意図にすぐに気付き、表情がやや険しくした。 


「面倒だな……」 


 二人の反応の理由。それはこのままのルートで進めば通る事になるであろう場所――

 

「このままだと<グラウンドブリッジ>に向かう事になるか……」


「クソッ――! ここには行くなって言ったが……それもやっぱ無駄だったか!」


 帰路の途中。レインとグランがずっと護衛達に言っていた事があった。

 それは、グラウンドブリッジにだけは通るなと言う事。


 自然の大橋グラウンドブリッジ――それは一言で言えばである。

 下は流れの早い川があるが、そこは大自然が作り上げた橋。

 天気が荒れても崩れる事もなく、横にも幅が広い為、昔からアスカリアでは商人や旅人、そして観光客等が通って来た場所だ。


 しかし、近年では通行が制限されおり、それがレイン達がグラウンドブリッジへ向かう事を反対している理由だ。

 その原因はグラウンドブリッジに起こっているにあった。


『キュウ~クルルル!』


 実は近年、グラウンドブリッジでは――そして一部にが走る等の異変が起こっており、調査の為に通行を制限していた。


 流石に今日明日、すぐにグラウンドブリッジが崩壊すると言う訳ではないが、やはり原因が分からない異常がある以上、回避できるリスクは避けたい。


「万が一の事があったら笑えねぇぞ……」


 サイラス王から密命を受けているレインとは違い、グランは純粋にステラと親書を守り通す事だけを考えていた。

 万が一の事があれば、それは開戦の合図と同じ。

 グランは意見が無視されても構う事なく、馬車の小窓から手綱を引く騎士へと言い放つ。


「おい! このままだとグラウンドブリッジへ行っちまう! 今のあそこは異変ばかりでリスクがありすぎる! 最初に行くなって言った筈だぞ!?」


「――確かにそう聞きました。ですが、こちらも一日でも早くルナセリアへ辿り着かなければならないのは、そちらもご理解の筈。ならば少しでも近い道を選ぶのは当然の答え。――それに元々、夜ならばあまり人もいないと聞きましたが?」


「だからって……あぁっもう! 好きにしてくれ……」


 グランは投げやりな態度でそう言い放った。


 すると、そんなグランの態度に護衛騎士もまた、最初からそのつもりだと言わんばかりに鼻で笑うと、そのまま窓を閉じて前方に集中するのだが、すぐに閉じた事で彼は気づく事はなかった。

 

――レインとグラン。二人の眼光と纏う気配が変わった事に……。 


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