第7話 リリィ
熱くなった頭を冷やしながら行く当てもなく
「すぅー……はぁー……」
森の中は空気が澄んでいて心地良く、小鳥の鳴き声を聞きながら深呼吸をしていると、先ほどの怒りが嘘のように気分が落ち着いてきていた。
式典の後はいよいよPLOWへの入場が可能になる。もう少ししたら戻ろう。
そんな事を考えていると、視界に
遠目からその姿を目で追うと、夏らしく緑色の着物を着た童女がそこにはいた。腰まで伸びた白い髪の女の子は、自然と
「——あ」
一瞬目が合ったように見えたが、気のせいだったのだろう。ふと気が付くと、まるで幻だったかのように消え去っていた。
「……俺も戻るか」
子供が大人の長話を聞かされてもつまらないだろうし、式典が終わるまでここで遊んでいただけだろう。そう結論付けて
——辺りには、何かの花の香りが薄っすらと漂っていた。
🌓
会場に戻ってくると、先ほどまで場を埋め尽くしていた人たちはほとんどいなかった。すでに式典は終わって、とっくに入場を始めている。
そうして列の一番後ろに並んだのだが、想像したより早く列は進み、予想に反してたった数分で入場ゲートまで辿り着くことが出来た。
「——これが入り口か」
ゲートの入り口部分には、上下左右に三メートルはあるエメラルド色の薄いベールのようなものが張られていた。危険物の持ち込みが無いかのチェックと、来場者の健康状態を確認する為の機械のようで、人体に悪影響は無いという
「……凄いな……」
そんな言葉が口をついて出るほど綺麗で、まるでオーロラが目の前に現れたかのような印象を持つ。
そうこうしている間に、並んでいた人たちは全員入場してしまい、俺が最後の一人となっていた。
「——怖くないから大丈夫ですよ」
「え⁉」
突然聞こえた声に驚いて隣を見る。いつからそこに居たのか、茶髪のロングウェーブに、おっとりとした雰囲気を
PLOWのトレードマークである、蛇が自らの尾を
「中に入ったら目印に従って、まっすぐ進んでいってくださいね」
「あ、はい。分かりました」
「……よろしければ、私もご一緒しましょうか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうですか? 遠慮なさらないでくださいね?」
「ありがとうございます。えーっと……リリィさん?」
胸元のネームプレートを見てお礼を言う。
「ふふっ、私のことはリリィでいいですし、敬語も必要ありませんよ。その方が親しみやすいでしょう?」
「は、はぁ。分かりました」
「それでは何かありましたら気軽に声をかけてくださいね」
そう言ってリリィはにっこりと微笑んでいた。
指先でベールを触ってみるも、触感は無い。触れた指が変色するということもなかった。
安全を確認した俺は、ごくりと生唾を飲み込んでから一歩を踏み出す。ベールの中は幻想的という言葉がぴったりな空間で、三六〇度エメラルド色のキラキラとした空間が広がってた。
そんな不思議な空間を、なんとも言えない奇妙な感覚に
「これが目印か」
少しの間
《——ようこそPLOWへ! 夢と希望が溢れる天空テーマパークを、どうぞ心ゆくまでお楽しみください!》
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