院内感染 7

 みなさんは総合病院と聞いて何をイメージするでしょうか。

 痛い、悲しい、待ち時間が長い、不気味……。少なくとも明るいイメージではないですよね。

 それは人がたくさん死んでいるからでしょうか。それとも病人たちの負のエネルギーが満ちているから?

 一つ言えるとすれば、夜の院内には他では味わえない独特の空気が確かにあるということなんです。

 事務室で残業していると、しん……とした薄暗い院内に時折ストレッチャーの乾いた車輪の音が響いて、患者の呻き声と忙しない足音がそれに続きます。

 外来診療は終わっていても、夜間救急や入院病棟は動いていて、病院は決して眠ることはありません。ただ、出入りや会計窓口は全て夜間玄関に切り替わるため、照明の落ちた一階はずいぶん薄暗くて、そのアンバランスさが不気味でした。そんな院内をぶらつこうものなら、天井に滞留した煮凝りみたいに深い闇の中から何かがこちらを覗いている気がして、どうにも居心地が悪いんですよね。

 それだけじゃありません。

 図書館で例の新聞を目にしてからというもの、夜の院内が妙に暑くて。もともと院内は患者の健康に配慮して、暖房の温度がいくらか高めに設定されているんですが、それでも夜九時の消灯時間をまわった院内は少し肌寒くなるはずなんですよ。それなのに、むしろ日中よりも暑いんじゃないかってくらいで。そのせいか、残業しててもやたらと喉が渇くんですよね。

 今にして思えばあれも立派な予兆だったんです。

 それなのに俺は、人が死んで幽霊が出るなら、病院なんてとっくに幽霊で溢れてパンクしているだろうなんて、無理やり笑い飛ばしていたんだから可笑しいですよね。

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